第26話

 民衆の指導者として君臨していた男の暗殺。

 新聞社はそれを五賢会による反抗だとして、厳しい言葉で非難する記事を販売。


「貴族の圧政からの開放をッ!!!」


「民衆に自由をッ!!!」


「五賢会をッ!!!」

 

 民衆の激しい抗議。

 王城の周りを多くの民衆が取り囲み、大きな声を上げる。

 

 それから約一週間。

 民衆による活動は日に日に勢いを増していた。そして、その勢いはとうとう行動を過激化させていく。

 貴族御用達の店が襲撃され、貴族の屋敷が襲撃されていく。

 

 それに対して慌てたのがこの国の貴族たちである。

 ぶっちゃけると、ほとんどの貴族はしっかりと自らの領地を治めている。傲慢かつ横暴に統治する方が自らの利益にならないことを知っているのだ。


 だからこそ、彼らにとってこんな運動が起こることは甚だ不本意極まりない。

 そして、彼ら貴族にとっても自らの上に立っている五賢会など目障りな存在でしかない。

 そのため貴族たちも民衆の運動を悪逆非道な五賢会を引きずり降ろすための運動として支援した。


 既に五賢会は崖っぷちの状態へと追い込まれていた。

 

 ■■■■■

 

「ふふふ……良いじゃん良いじゃん」

 

 僕は学院の理事長室から民衆による運動を眺める。


「……ごめんね」 

 

 そんな中、僕の後ろに立っているマルジェリアは僕に対して謝罪する。


「もう少し早くに私が動いていれば……」

 

 マルジェリアが動けば、一発で解決していたと言っても過言ではない。超大希望な魔法を使用することが得意なマルジェリアならばアレイスター領の民衆を守りながら正規軍を叩き潰すことが出来ただろう。


「別に気にしてない。最初からあなたには期待していないから」

 

 だがしかし、それは出来ない。

 マルジェリアは既に牙を持たぬ獣だ。牙を抜かれた獣だ。

 牙を抜かれ……それでも最も重要で、根本的ななものを必死に隠し続けてきたアレイスター家とは違う。


「今、中立で居てくれるだけでも十分だよ」

 

 僕は五賢会より送られた招集の命令状を空間魔法で消し飛ばして、笑みを浮かべた。

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