第27話

 とある一つの豪華な馬車。


「クソッ……あの愚か者どもがッ……!覚えておれ……我らに楯突いたことを公開させて……ッ!」

 

 その馬車の中。

 常人であれば考えられないほど……意匠が散りばめられた国王よりも豪華な服を纏った枯れ木のような老人が忌々しそうにかすれた声を上げる。

 

 五賢会の一人。

 あの中で最も若い男だ。


「あの女も女もだ……ッ。アレイスター家など放っておけば良いものを……わざわざ突きおって……。あれは放置が最善じゃろうに……何故完全に支配下に置くことに執着するのだ……愚か者」

 

 忌々しそうに老人はブツブツと呟く。

 

「殺せッ!!!」


「この国の膿たる五賢会を殺せーッ!!!」 

 

 老人が乗っている馬車が揺れる。


「なっ……なんじゃ!?」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!」


「行けッ行けッ行けッ行けぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええ!!!」


「祖国のためにィ!!!」

 

 馬車の外から激しい戦闘音が聞こえてくる。


「ヌォ!?」

 

 老人がそれに対して戸惑い、焦っている間に馬車の方へと農具や武器などが突き出してくる。

 その一つが老人の腹部へと刺さる。


「かひゅ……かひゅ……」

 

 老人から血が溢れ、馬車をゆっくりと……赤く染め上げていく。


「良しッ!!!」


「だ、誰か……我をたしゅけろ……!」

 

 老人は馬車から転がり落ち、連れてきていた護衛へと助けを求める。

 一切感情の浮かばぬ瞳で、一切感情を表さない表情を浮かべている護衛、あの女の持っている騎士へと。


「なッ……」

 

 外の光景を見て、

 そこにいるのは各々戦えるものを持って集結している農民たちと、老人がつい今方交渉の席に着いていた貴族の子飼いの騎士団が護衛と戦っている姿だった。

 

 精鋭中の精鋭であるはずの騎士は……その大半が何かよくわからない謎のネバネバによって拘束されている。

 残されている数少ない騎士たちも、この領の騎士と農民たちによって動くを止められてしまっている。


「殺せッ!」


 一人、転がり落ちた老人の方へ農民が近づいていく。


「あのガキッ!!!こんッ」

 

 五賢会の老人を……農具が貫き、大きく吐血させた。


「ァ……」

 

 あまりにも長い時を行き過ぎた男はその体をゆっくりと倒させた。

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