第3話

「しっかりと仕事はこなしている?」

 

 とある建物の最上階。

 せっせと新聞を作っている会社の社長室へと僕は訪れていた。


「はい。出来る限りのことをしております」

 

 僕の言葉に目の前にいる男性が頷く。

 

「そうか……それで?どこまで計画は進んでいる?」


「はい。まず第一目標であった新聞を市井の者たちに広めることには成功しております。次点の目標であった王侯貴族への不信感を煽ることに成功しております。それに加えて思想家の育成、簡単な教育の施しなども成功しております」


「なるほどね……」

 

 僕は男性の言葉に頷く。

 何の問題もなく、僕の想定通りに計画が進んでいるようだ。


 この世界の民衆への娯楽。

 それは少ない。連日民衆が死刑台へと赴き、まるでスポーツ観戦やライブを見に来るファンたちのように、死刑執行に対して喝采を上げて楽しんでいるような世界なのだ。それくらい娯楽に飢えているのだ。


 そんな中、様々な情報が書かれた新聞を流行らせることくらい容易い。

 そして、国民たちはまるでスポンジのように新聞に書いてある情報を鵜呑みにし、それを信じるようになっていく。

 たとえ新聞に書かれていることがどんなに馬鹿馬鹿しく、アホらしいことであっても、だ。

 反ワクチン、人工地震、DS等々。陰謀論とは一応少中等教育を受けているはずの一部の日本国民でさえ熱中させるのだ。

 学校にも行っていない、世間知らずの国民たちを信じ込ませるくらい容易い。実に容易かった。

 この国の国民はもはや全員陰謀論者と言っても過言ではない。

 ……。

 …………。

 そんな現状を作り出した張本人が言うのもなんだけど……地獄かな?


「じゃあ……君は死んでくれ」


 何気なく告げた僕の言葉。


「はい」

 

 それに対して男性は一切動じることもなく頷く。

 ……それがさも当然かのように。

 自分が殺される。

 それを……なんとも思っていないかのような言動と行動。常人には理解出来ない領域がここに存在していた。


「じゃあ、さようなら」

 

 僕は手刀で男性の首を掻っ切る。

 男性はあっさりと……生命を失い、地面へと倒れ込んだ。

 返り血を僕は浴びる。


「……行くか」

 

 僕は首から大量の血を流している男性をその場に残してこの場から去った。

 後に残されるのは王都で最王手の新聞会社として活躍していた会社のトップの遺体だけだ。

 これは……大きなニュースとなって国中を駆けめぐり、王侯貴族への不信感を更に強める出来事となるだろう。

 そして、僕の計画は更に進むことになるだろう。





「クソが……」



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