第11話

「ぜ、前代未聞だぞ……」


「全教科満点……というかこの算術の問題はどうやって解いたのだ?」


「負けたって本当かよ!?」


「……何あの魔法……壊れないはずの的を消滅させる魔法って何……」


 王立騎士学院の入学試験が終わった後の職員室。

 そこでの話題はたった一人の少年の話に侵されていた。他の生徒たちの話題は一切上がらない。

 勇者と呼ばれる少年や王族、公爵などのすごい人たちがたくさんいるのにも関わらず、だ。


 筆記試験満点。武技試験満点。魔法試験満点。

 それだけでもこれ以上無いくらいに異常なのにも関わらず、終了時間も設立以来最速だった。

 

「どうなっているの……?」


「不正……?」


「そんなわけないじゃない。私たち全員が気付けない不正って何よ?」


「あぁ。そうだ。特に筆記試験の算術なんかそうだ。……これは……怪物としか言えない……どうやって問いている?ちゃんと筋は通っているように見える……この式は……」


 不正なのではないか。そんな意見はあっさりと否定される。


「確かに……あの場面で誰にも違和感を抱かせず不正をしていたというのならば……それはもう不正も実力として言っていいレベルじゃないか?」


「……アレイスター家。あの落ちこぼれ貴族だろ?なんであそこにあんな化け物みたいなやつが……こんな神童が生まれていたというのならもう少し何らかのアクションがあっても良いと思うんだが……」


「もしかして俺らが知らないだけでアレイスター家はなにかあるのか?」


「いや……流石にそれは飛躍し過ぎだろう……」

  

 騒がしくなっている職員室。 

 

「フォッフォッフォッ。どうやら今年もまた入学試験の話で盛り上がっているみたいじゃの。今年の生徒はどうかね?」


 そこに一人の老人が訪れた。

 ロイマール・アッケンベルグ。アッケンベルグ公爵家の現当主であり、この学院の学院長を勤めている人物である。


「すごいですよ……」


「あぁ。……化け物がいる」


「もうこの一人にしか目がいかない」


「ほう?一人とな?」


「あぁ。全てのテストで満点を取り、歴代最速で試験を終わらせた生徒がいるんですよ」


「俺に勝ったしな」


「魔法に関しても私以上なのは確実ね」


「何?」


 職員の言葉に学院長は驚きの表情を浮かべる。


「なんと……そんな人物が、名前は?その人物の」


「エルピス・アレイスター。アレイスター家の人間ですよ」


「アレイスター家だとッ!?!?」


 学院長は大きな声で、これ以上無いくらいの驚愕の声を上げる。

 そんな学院長の、その表情は恐怖に染まっていた。

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