第35話

「おかえりなさいませ……」

 

 ゆっくりと歩いて帰ってきた僕を出迎えたのはミリア。

 そのお腹はぽっこりと膨らんでいて……表情は苦しそうだ。

 しかし、そんなことは決して声に出さない。

 出来る限り誤魔化しながら、僕の前に立っていた。


「パンケーキのご用意が出来ています」


「あぁ」

 

 僕はミリアが作ってくれたパンケーキを食べ始める。

 たっぷりと生クリームとフルーツが乗せられていて、その上から大量のメープルシロップがかけられている甘くてとても美味しいパンケーキだ。


「美味しい……良き働きだ」


「ありがとうございます」

 

 僕の言葉に対してミリアは満足げにお礼の言葉を口にした。


「それで……用とは何だったのですか?」

 

 未だにご飯が食べ終わっていなくて僕の前に座っているリーリエが口を開く。

 

「ん?……別に大した用じゃない」


「あなたが帰るための用?それなら嬉しいのだけど?」

 

 ラザリアが僕の方を睨みつけながら口を開く。


「帰らんよ」

 

 というか帰りたくても帰れない。

 僕の帰っていなくなった時にイベントが起きたら……終わりだ。なんとか勝負は出来るかも知れないが、それでも勝てないだろう。

 全滅するのが目に見えている。


「ちっ……」

 

 それに対してラザリアが大きな舌打ちをつく。


「ふへへへ。エルピスくんと一緒に居られる時間が長くなるので嬉しいです!」

 

 僕の答えに対してリーリエは嬉しそうに破顔させている。


「そうか」

 

 リーリエに対して僕は適当な言葉を投げかける。


「えへへ……帰る時も一緒ですよ?」


「……うぅ……」

 

 純粋無垢なリーリエの声と姿を見てうめき……そしてなにも言わずに睨みつけていた。

 ちなみにサブマはお腹一杯で苦しそうにしているミリアを凝視していた。……そういえばサブマは好きな女の人がご飯を食べているのを見るのが好きだったな。


「……なんでしたら一生ここで暮らしても……」


 ん?今、リーリエなんて言った?

 小さすぎてあまり聞こえなかったのだが……まぁ、良いや。

 ……プライベートモードだと超人的な聴力も発揮できなくなるから不便だな……一番プライベートモードで居る時が楽なんだけど。


「それだったら何の目的だったの?こんなところで野暮用もなにもないと思うんだけど?」

 

 スクワットをして体を鍛えていたキャサリンが僕に疑問の声を向けてくる。


「……お前らに言う必要はないだろうが」

 

 それに対して僕は吐き捨てるように告げる。


「そんなことよりお前はさっさとリハビリしろ!さっきから見ていたが全然なってないんだよ……僕が直々に指導してやるよ」

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