第7話

「ふわぁ……」 

 

 僕はあくびを浮かべながら馬車に揺られる。


「改めて思うのだが……お前らの関係は本当に不思議じゃよな」

 

 馬車に揺られる僕……ミリアの膝の上で揺られている僕を見てアレリーナが呟いた。


「そうでしょうか?」

 

 ミリアがアレリーナの言葉に対して首を傾げる。


「当たり前じゃろ。……ミリアはエルピスのことが嫌いなのだろう?にも関わらずまるで恋人のように膝枕なんかをしているじゃないか」


「これはエルピス様に命じられたのでいやいややっているだけに過ぎません。私にとっても不本意でしかありません」


 アレリーナの言葉に対してミリアがそう返す。

 仕方ないじゃないか。

 ミリアの膝は柔らかくて気持ちいいのだから。


「そうかのう?……それにしてはそれほど嫌がっているようにも見えないのじゃが……」


「……っ」


「ぴゃ」

 

 アレリーナの言葉に対してミリアは言葉を詰まらせ……そして全力で睨みつけた。

 ミリアに睨みつけられたアレリーナは悲鳴を上げた。


「あなたには言っていたはずですよね……?エルピス様は私の父の仇であると……!そんな相手のことを好きになるとでも……!」


「い、いや……

 

 いや、アレリーナ。

 そこで言葉に噛み付いていくなよ。勇者か?

 別に僕は仕事モードでミリアの感情なんて測ってないし……プライベートモードの場合既に壊れている僕じゃ恋愛感情とかを察せないのだが……流石にミリアが僕のことを好きになるというのは考えらないと思うのだけど?

 だって。

 

 僕はミリアの父親を殺しているのだから。

 

 自分の父親の仇を。

 人を平然と殺すよような相手を好きになるなんてことはありえないだろう。


「私にけんかを売っているの?」

 

「カッ」


 ミリアは殺さんばかりの……強烈な殺気が込められた視線をアレリーナの方へと向ける。

 良い感じに殺気が込められてるじゃないか。

 暗殺者のごとく……相手に自分の死を想像させるほどの良い殺気だ。実に素晴らしね。褒めるべきだろう。


「そもそもの話……!私は一度エルピス様に暗殺を仕掛けているのッ!そんな相手に対して良い感情を抱いているはずが……!」


「ん?別に僕はミリアのことを嫌っていないぞ?」

 

 僕はミリアの言葉を否定する。


「……え?」


「暗殺されかけた程度で嫌いにはならん。僕がどんな人生を送ってきていると思っているんだ」

 

 暗殺されるなんて戯れで片付けられるほどの壮絶な人生を歩ゆんで来ているのが僕だ。

 というか、そもそも嫌っている相手を自分の召使いになんてしないだろう。

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