第8話

 アレリーナは恐怖し、ミリアは沈黙し、僕は空気を読む。

 

「……」


「……」


「……」

 

 アレリーナの意味のない一言によってこの場に地獄が降りていた。信じられないくらいの地獄だ。

 気まずいとか……そんなちゃちなもんじゃねぇ。もっと恐ろしい何かの片鱗だ。


「も……もうすぐエルフの里につきますよ」

 

 この沈黙を破壊するかのようにアレリーナが言葉を話す。


「……」

 

「……」

 

 それをガン無視するミリア。

 僕も空気を読んでガン無視する。


「……」

  

 アレリーナはガン無視されたことに傷つき、自分も黙り始める。

 その瞳には涙すら浮かんでいる。

 馬車の内部には再び沈黙が降りた。

 

 ちなみに僕たちが乗っている馬車。

 そこには御者がいない。というか、馬車って言っているのにも関わらず馬すらいない。

 乗っているのは僕がアレイスター家でも自由に、早く動けるようになるために作った自動車もどきだ。

 オーバーテクノロジーだし、全然技術とかもないから中途半端な駄作でしかないけど、それでもまともに機能する代物ではある。

 まぁ、とはいえこんなもの使っていたら目立つなんて言う話ではない。

 暗殺者としては不向きも不向きなので、お蔵入りしている。

 さっさと産業革命が起こってくれるのを待つだけだ。


 僕が起こしても良いけど……そんなことしたら人類の文明の成長にバラつきが生まれて意味わからない方向に成長したら困るし。

 産業革命だけが進みまくって、医療技術0とかになったら目も当てられない。公害でオワオワリ。

 よくラノベとかで知識チートとかしているのを見るが……無理やり足りない知識でチートして革命なんか起こしても大変なことになるだけな気がするからしないでおく。


「……」


「……」


「……」

 

 沈黙の中、馬車もとい自動車もどきは走る。

 それからしばらく。


「ついたね」


 エルフの里付近にたどり着いた。


「え……?まだちょっとあるのじゃが……?」


「それはエルフの場合ね。エルフの里に貼られている結界をまずは破壊しないと」


 僕は立ち上がり、自動車もどきから降りる。


「ほら。ミリアも降りて」


「承知致しました」

 

 ミリアも自動車もどきから降り、それを見たアレリーナも慌てて自動車もどきから降りる。


「ほっと」

 

 僕は自動車もどきを別の空間へと飛ばしておく。ここに置いていくわけには行かない。

 不良品ではあるものの……作るのには時間がかかったし、頑張ったから捨てたくはない。


「さて、と」

 

 僕は目の前に広がっているエルフの里を守る結界の方へと視線を向けた。

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