第60話

「ハァ!!!」

 

 剣を握った主人公が、自身に強化魔法をかけてムカデの魔物へと突進していく。

 それと同時並行でムカデに対して弱体化魔法をかけ、更に毒という状態以上も付与する。


「ヤァ!!!」 

 

 そして、ムカデの魔物に向かって剣を振り下ろした。

 

 カンッ

 

 しかし、主人公の振るった剣はムカデの魔物の硬い外骨格に阻まれてしまう。


「『火炎烈技』」

 

 主人公が握っている剣が激しく燃え盛り、ムカデの魔物を燃やす。

 ……しかし、その炎がムカデの魔物に効いているようには見えない。


「……器用だな」

 

 様々な魔法を平然と発動させる主人公を見て隣にいるアルミスがボソリと呟く。

 当然だろう。

 あいつは主人公なのだ。

 全ての魔法術式領域に絶大の才能を持っているに決まっているじゃないか。


「『ウィンドカッター』」


 ラザリアが魔法を連続して唱え、次々と風の刃を放っていく。

 しかし、どれも決定打とはならない。


「ちっ……硬いわね」

 

 ラザリアは一切効いていないように見えるムカデの魔物を見て呟く。


「ギシャァ」

 

 ムカデの魔物が主人公たちの方に意識を向け、体をよじらせて突撃する。


「はい!」

 

 リーリエの気の抜けた声。

 ムカデの魔物による突進はリーリエの結界魔法によって止められた。

 リーリエはゲームでも屈指の、というか最強クラスのタンク。

 結界魔法と、自身の単純に高い防御、体力ステータスに防御を固くする強化魔法に、自分の体力を回復させる回復魔法にと。タンクとして必要なものが全て高いレベルで可能なのた。

 そんなリーリエはこの時点でもムカデの魔物の攻撃を正面から受け止めても耐えるだけの強さを持っていた。


「ラァ!!!」

 

 主人公の男友達が握っている巨大なハンマーを振り下ろし、ムカデの魔物へと攻撃を仕掛ける。

 ハンマーによる強烈な一撃はムカデの魔物の外骨格にヒビを入れた。


「『天雷剣』」

 

 主人公強い威力を持っている魔法剣によってもムカデの魔物は外骨格にヒビを入れられる。


「『エアプレス』」

 

 ラザリアの大規模魔法が発動する。

 圧倒的な質量を持った空気の塊がムカデの魔物を地面へと叩きつける。


「今よっ!」


「おう!」


「あいよ!」


「はい!」

 

 動けなくなったムカデの魔物たちに向けて主人公たちは次々と攻撃を開始する。


「ふむ。……かなりやるな。震えていた男だとは思えない」


「ほー。さすがは生徒会にならないかと誘われる者たちだな!……妾よりも強そうだぞ……」

 

 主人公たちはムカデの魔物との戦闘を有利に進めることに成功していた。

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