第61話
「このまま勝てるんじゃないか?」
隣にいるアルミスがそう呟く。
確かにアルミスの言う通り主人公たちは順調に戦っていた。
ムカデの魔物の攻撃はリーリエが防ぎ、近距離からは主人公の男友達が、中近距離からは主人公が、遠距離からはラザリアから攻撃を加える。
それらによって確実にムカデの魔物の外骨格に亀裂を入れていた。
「それはどうかな?」
「え?」
僕の言葉にアルミスは首を傾げる。
「良し!もう少しだ!みんな!頑張ろう!」
主人公の周りを奮い立たせる声。
「はい!」
「おう!」
「えぇ!」
それに他の三人も元気よく頷く。
主人公の言う通りムカデの外骨格には大きな亀裂が走っていて、今にも砕け散りそうだった。
「最後!」
主人公が土で覆われ、重さが増した剣を振り下ろす。
「ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
それによってボロボロだったムカデの魔物の外骨格が完全に壊され、砕け散る。
「ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
「え?」
一度、一箇所が壊れた外骨格。
壊れた一箇所から、壊れて出来たその亀裂が……伸び主人公たちが一切攻撃していないような場所まで、ムカデの魔物の全身にまで広がっていく。
「なっ。何が!?」
「何か嫌な予感がします!一旦引いてください!」
「「おう!」」
リーリエの言葉に主人公と主人公の男友達が頷き、距離を取る。
「ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
ムカデの魔物から上がる甲高い声。
そして、ムカデの魔物の外骨格が全て砕け散る。
外骨格の下にあるもの。それは半透明な黄色い膜。
ビリリリリ
そして、半透明の黄色い膜を突き破ってさっきよりも巨大なムカデの魔物が姿を顕にする。
黒く光る禍々しい外骨格に幾つも存在している百足。
頭に存在している大きな顎が幾度も震え、頭からは触手が伸びている。
「……ッ!?」
いきなりの大変貌を遂げたムカデの魔物に主人公たちは驚愕する。
「な、何だ……あれ?」
「脱皮だよ」
驚き、呟いているアルミスの言葉に僕は答える。
「脱皮……なるほど、脱皮か」
「そ。感じていた魔力よりも弱いなって思ったでしょ?」
強い魔物には大きな魔石があり、そこから膨大な魔力を漂わせているので魔物がどれくらい強いかはすぐにわかる。
「あ、あぁそうだな」
僕の言葉にアルミスは頷く。
「くくく、本番はこれからだよ?」
僕は笑みを浮かべて、そう呟いた。
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