第35話

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 僕の前の前でレイハが息を切らして、聖剣を構える。


「ゴミが……ッ!!!」

 

 既にボロボロとなり、何の光も放っていない刀身を構えて。

 レイハはただただ僕のことを睨みつける。親の仇でも見るかのような視線を僕へとぶつけてくる。


「もう終わりだよ……レイハ」

 

 僕は未だ衰えない輝きを放っている刀を向けて、宣言する。


「ふーふーふー」

 

 レイハの目は未だ死んでいない。

 僕のことを一心に似た見つけ、殺さんと息を荒らげている。

 しかし、そんなことをしたところで無意味である。


「シッ」

 

 僕はレイハとの距離を詰め、刀を振るう。


「ァ!!」

 

 合わせようと振るった聖剣を僕の人睨みで消し飛ばし、刀を振るう。


「アァァァァァァァァァァ!!!」

 

 レイハの体を僕の刀が斬り裂く。

 血が吹き出し、地を染める。

 ……まだ浅い。

 

「フンッ」

 

 僕は刀を切り返し、レイハを狙う。僕の狙いはレイハの足だ。


「……ァ」

 

 致命傷を裂けるため、首と心臓部を……それだけを守っていたレイハの足を僕の刀は容易く斬り落とす。


「……クァ」 

 

 レイハが地面へと体を倒し……それでもなお僕のことをにらみ続ける。


「……呆気ないな」

 

 僕はそんなレイハの元へとゆっくりと近づいていく。

 もうどうすることも出来ない。何も出来ない。……出せる手など残っていない。


「アレイスターに……ッ!!!アレイスターに……ッ!私は……ッ!!!」


 レイハは歯ぎしりする。自らの歯を削るレベルで。


「さようなら……」 

 

 僕はレイハの首に向かって剣を振り下ろす。

 何も出来ない。

 何も抵抗できない。

 長い間、ずっと世界の頂点として君臨していた怪物も……その最後は実に呆気ないものだ。


「……アイン……」

 

 あまりにも長い時を生きた……生きすぎてしまった一人の少女はアレイスター家に語り継がれている男の名を、たった一人の愛した男の名を呼び、その生涯に幕を下ろした。


「ばーか」

 

 処女拗らせてんじゃねぇーよ。……良い迷惑だよ。本当に。

 

「終わったよ……ようやく」

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