第37話

「あぁー!」


 残念そうなリーリエの声。


「あっぶな」

 

 それに対して僕は軽く冷や汗を流す。


「……ナイス不意打ちだわ」


 僕は素直な感想を漏らす。

 相手を油断させる発言からの不意打ちは上手い。……完全にもう終わったと思ったもん。

 

「というか、もう天剣使えるんだな……」

 

「えっ!?」

 

 僕の漏らした一言にリーリエは驚きの声をあげる。


「なんで天剣について知っているんですか!?」


「……んっ?あっ……」

 

 僕は自らが失言したことに気づく。

 そうじゃん。なんで僕が天剣について知っているんだよ。

 

 天剣。

 これはリーリエの切り札とも言える技であり、ゲームでも重要視される技の一つだ。

 自分が相手より喰らった総ダメージをそのまま威力として変換して生み出す天剣。

 相手から与えられたダメージが大きければ大きいほど威力を増していく天剣の威力は絶大である。

 この天剣があるからこそ僕はリーリエをゲームで、というかラスボスであるエルピス戦で重宝したのだ。


「……」


 僕がなんで天剣について知っているか、その疑問に対してどう答えるか悩んでいる間……なぜかは知らないが、どんどんリーリエの顔が輝いていく。

 どうしたんだ?……こいつは。


「やっぱり私のことに興味があるんですね!……天剣のことについて調べるくらい!!!」

 

 リーリエは心底嬉しそうな声で告げる。


「あー」

 

 僕はそれを聞いて何とも言えない声を上げる。

 なるほどね。

 その着地点に行くのね……。

 

「ふふふ!そんなに知りたいのでしたら、もっと私に構ってくれても良いんですよ!」


「……」

 

 僕はしばし考え込む。

 それも良いかも知れない。

 今、現在進行中で国民の扇動を急速に進めている。

 地球で言うところのルソーやロック、モンテスキューのような思想を持った人間は既に誕生してきているし、新聞などで貴族、王族たちの黒い部分を掲載することによって国民たちは貴族、王族たちに対して懐疑的な視線を向けている。

 

 特に、南部の貴族たちの騒動は色々と影響が大きかった。

 貴族、王族たちは国民たちが動いたところで、と楽観視しているため未だ何の対策も取られていなかった。

 

 今回の事は僕の想像以上に早く進んでいた。

 正直に言ってこんなにテンポよく進むとは思っていなかった。

 

「あぁ……良いぞ」

 

「へ?」

 

 僕はリーリエの言葉に了承する。


「今までが冷たすぎたもんな。……前みたいに戦い方を教えてあげるよ」


 お父様考案の策。

 これを実際に行ってても良いかも知れない。

 既にお父様の策によって発生するデメリットは無視出来るレベルだ。

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