第17話

「おー!!!」

 

 僕の隣に座っているキャサリンが窓の外の景色を見て歓声を上げる。


「海だぁー!!!」

 

 馬車の外。

 そこに広がっているのは果てしなき青。

 海だ。

 太陽の陽の光を反射している水面が強い輝きを放っている。


「おぉー!!!」

 

 キャサリンは初めて見る海に歓声をあげている。

 その喜んでいる姿はまるで小さな子供のようだった。


「凄いねぇ!凄い!凄い!」


「あぁ……そうだな」

 

 僕はハイテンションなキャサリンを見て頷く。

 前世、僕が暮らしていた場所は海の近くだった。エロゲをクリアして、暇になったときに海岸沿いを歩いたり、ごくたまに行く高校の通学路でもこんな感じの青い海が見えていた。

 ……懐かしいな。

 本当に懐かしい。前世、か。一体何年ぶりのことだろうか。……もうすぐ前世の年齢に追いつくんだよな。


「……そろそろですね。私たちの目的地はあの街です」


「なるほど」

 

 アルミスが御者台に座っているマルボリの言葉に頷く。


「おぉー!!!なんか風とか!匂いとかも普通のとは全然違うよ!」


「あぁ。そうだな」


「むむむ!」

 

 ずっと窓を見ていたキャサリンが僕の方へと視線を持ってくる。


「さっきからずっと適当じゃないですか!?私のことをちゃんと見て!聞いて!話して!ふんす!」

 

 さっきから気の抜けた返事しかしていない僕に対してキャサリンが怒りを顕にする。

 

「あぁ。そうだな」

 

 そんなキャサリンの言葉に対してあいも変わらず適当な返事を返す。


「ムキーッ!!!」


「くくく」

 

 僕は頬を膨らませて怒るキャサリンを見て笑い声を上げる。


「ハァ……ハァ……ハァ……」 

 

「うーん。あいも変わらずにカオスだね」


 カオスにしているのは僕じゃない。生徒会長だ。

 僕とキャサリンだけならただただのバカップルのようにも見えるだろう。

 しかし、それにそんな様子を見て頬を赤く染めて息を荒らげている変態が居るからこそおかしな状態となっているのだ。


「もうすぐ着きますからねー」

 

 マルボリの声が僕たちの耳へと入ってくる。

 ……これが護衛依頼だと誰がわかるのだろうか?

 傍から見たらただの旅行の風景にしか見えないだろうけど。……まぁ、メンツの関係性は不思議だけど。学生四人に巨女が一人。

 まぁ、道中こちらを狙って襲ってきた盗賊団を一つ。襲いかかってきた十を超える魔物の数々をいとも容易く葬り去っているので、ちゃんと護衛としての依頼はこなしている。

 例えパッと見依頼をこなしているように見えなくとも、ちゃんと依頼はこなしているのだ。

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