第18話

「ほっと」

 

 僕は空間魔法を使って距離を消滅させる。

 馬車に積まれた荷物の数々が次々と勝手に下ろされていく。


「な、何が起きているのでしょうか……?」

 

 目の前で起きているそんな光景にマルボリが困惑し、狼狽している。


「僕の空間魔法は……原理的には世界魔法と同じなんだよ。自分が作った無茶苦茶な法則が働いている空間を作って相手を引きずり込む。自分の世界を展開して、世界を塗り替える世界魔法とはプロセスは違うけど、結果は同じだ。自分にとって有利な世界に相手を連れ込んで戦う。……僕が荷物が勝手に下ろされることを願って魔法を使って、その空間に引きずり込んだ。だから勝手に下ろされるんだよ」

 

 僕はあえて最もわかりにくい形でマルボリに対して説明を行う。

 キャサリンはこれっぽちも理解出来ていないようだったが、アルミスとマルボリは理解出来たようだ。

 生徒会長は最初から会話を聞こうともしていない。


「これで終わりだ」

 

 僕はすべての詰み荷を卸し終わる。これで良しだね。


「で?僕らが他にすることはあるか?」


「えっと……次はすぐに商談ですので、お願いするようなことは護衛だけですね」


「なら、僕は要らないよな」

 

 マルボリの言葉を聞いて僕は口を開く。


「護衛なら別に生徒会長一人でも十分だし……僕は街の散策でもしてくるわ」


「おぉい!?護衛は!?生徒会長が対処できないほどの有事の際はどうするつもりだ!?」


 僕の言葉にアルミスがツッコミを入れる。


「大丈夫だよ。索敵は怠らない。それに、この小さな街程度なら僕の移動圏内だ」

 

 アレイスター家は移動に制限がかけられている。

 だが、この小さな街程度であれば自由自在に移動出来るだろう。


「僕の理不尽さを舐めないほうが良い」


「いや、お前の理不尽さなら誰よりも知っているよ」


「は?」

 

 僕はアルミスの言葉に対して威圧的に言葉を返す。


「それだよ!?俺への当たりが強すぎる!?」


「最初はなんかミステリアスチックで不敵な僕の同志かと思ったんだけどな……今じゃただのツッコミ苦労人に……」


「誰のせいだ!誰の!……え?俺ってばそんなに苦労人なん?え?……え?」


「うし。ちょっと散策してくるかぁー」

 

 僕は呆然としているアルミスのことなんか忘れて、手を振るう。


「あ!待って!私も行く!」


 そんな僕の後をキャサリンも追いかけてくる。

 更に人が減った、が……まぁ、護衛なんぞ生徒会長とアルミスが入れば十分だろう。

 何かあれば僕も一瞬で転移することが出来るしね。

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