第7話
「ははっ……」
僕は体を震わせながら……引き攣った笑みを浮かべる。
誰も居ない廊下の壁に背中を預けて……。
心を殺せ。
心を殺せ。
心を殺せ。
心を殺せ。
心を殺せ。
僕は念仏のように唱え続ける。
こうするしかなかった。こうするしかなかった。こうするしかなかった。
こうする他になかった。
僕は自分に向かってそう念じ続ける。
魔族にアレイスター領の護衛を任せ、五賢会を潰したとしても……その後大衆が魔族の力を借りたアレイスター家に対して良い思いを浮かべないだろう。魔族に人類が屈した。
アレイスター家が人類を売ったなんて思われたら最悪だ。
傭兵を雇うなんてことをしたら五賢会に疑われることになるし……そもそも傭兵程度じゃ正規軍相手をするには荷が重いだろう。
僕が怒りに任せて五賢会を殺したとしてもアレイスター領が焼け野原になるだけだろう。
これしかなかった。これしかない……。
このまま新聞社をうまく使ってアレイスター家を被害者にして……五賢会を悪者にしたてあげる……。
これが一番確実。これが一番良かった。
お母さんだってアレイスター家の人間だ。覚悟くらい決めていたはずだ。
……これで良かった。良かったんだ……良かったはず、なんだよ……。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
無様を晒すな……前を向け……足を止めるな。
「ん……えっ」
もう止まれない。もう何もいない。もうひとり。
殺せ。
殺せ。
殺せ。
殺せ。
殺せ。
前を見ろ。後ろを見るな。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
全ては目的達成のために。
アレイスター家の悲願のために。
アレイスター家の存在する理由を失くすために。
さぁ……立てッ!
さぁ……笑えッ!
さぁ……求めて、不敵に、傲慢に、進んで、貪欲に、狡猾に、踊らせて、笑顔で、禍々しく、磨いて、狂気に、強欲に、
誰よりも人間らしく。
誰よりも求めて。
誰よりも偉そうに。
誰よりも見下して。
人間として、道具として……生きろ、目的を達成するその日まで。
笑え。嗤え。嘲笑え。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
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