第51話

「ふわぁ。面倒」

 

 僕はあくびを浮かべながら呟く。

 今、僕がいるのは森の中。校外学習を行うための


「……お前がここに来るとは思わなかったぞ」

 

 僕の隣にいるアルミスが僕に対して割と失礼なことを告げる。


「ふん。生徒会長のことは僕も好ましく思っているからな」


 生徒会長は前世の最推しだ。今のところ勇者と関わる様子もないし、僕の最終目標とかぶるところもある。

 仲良くしたいところだ。


「……お前が、好ましく思っている、だと!?」


 それに対してアルミスも驚愕する。


「お前は僕を何だと思っているんだ?別に僕が好ましく思っている人間などいくらでもいる。お父様もそうだし、僕のメイドであるカレア、娼館の女であるエウリアなんかも好ましく思っているぞ?他にもいる」


「……娼館の、女」

 

 アルミスは『娼館の女』という言葉に反応したようだ。……僕が娼館で暮らしていることくらい知っているだろう?アルミスも。


「いや、本当に今日は来てくれて助かった。来てくれなければ泣いているところだった」

 

 生徒会長も話に加わる。


「それにしてもエルピスが私を好ましく思っていてくれたなんて感激だ」


「お前のような便利な雌豚は他にいないからな」


「んんっ!!!」

 

 僕の一言に生徒会長は顔を赤らめ、体を悶えさせる。

 

「……どうしようもない」

 

 そんな生徒会長を見てアルミスはぽつりと呟いた。

 アルミスの表情からは色濃い疲労の感情が見て取れる。


「んん!さて、話をこの森での魔物掃討戦に移そう」

 

 生徒会長が真面目な表情を浮かべ、告げる。

 それに対してアルミス、ミリア、アレリーナが頷いた。


「私たちがやるのはここにいる魔物の殲滅。全滅だ」


「全滅……?減らすことじゃないのか?全滅させてしまったら……」


「うむ。全滅してしまったら一年生が倒す分の魔物がいなくなってしまうではないか」


「あぁ。それは安心して」

 

 アルミスとアレリーナの言葉に僕が答える。


「うちの家が適正な魔物を捕まえてここに運んでくるから」


 うちの空間魔法は別空間へと魔物を隔離して捕獲したりと、何でも出来てしまう。


「な、なるほど」

 

 僕の力の一端を知っているアルミスたちにはそれだけで十分だったのだろう。納得したように、少し引いたように頷いた。

 僕だけがおかしいのではなく、アレイスター家がおかしいのだ、とようやくアルミスたちも気づき始めている。

 実にいい傾向だ。


「ということだ。君たちには魔物を一匹残らず殲滅してもらう。これは生徒会メンバーの訓練も兼ねている。励めよ?若人たち」

 

 生徒会長が胸を張り、そう告げた。

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