第19話

 膨大な力が溢れ、温かな光が図書室を明るく照らしあげる。

 ステンドグラスから差し込まれる怪しげな紫色の光を駆逐して。


「……」

 

 魔法陣の中心に寝かせられているマルボリに対して、アルミスが膨大な力を流し込んでいる。

 眠っている邪神の力を抑え、意識をはるか底へと落とし、その存在をこの世から隔離していく。

 

 アルミスの使う封印術は一切の無駄がなく、実に美しいものだ。封印術の腕だけなら神さえ凌駕するだろう。

 だけど。

 

 僕は超えられない。

 

 ゆっくりと、静かに僕は立ち上がる。

 次の瞬間。


「えっ!?」

 

 魔力が荒れ狂う。紫色の光を駆逐していた温かな光は……血のような真っ赤な光へと塗り替えられていく。


「こ、これは……魔力が暴走して!?キャッ!」

 

 アルミスの手によって制御されていた力が一気に膨れ上がって、その制御下から外れていく。


「くくく……」

 

 僕は笑いながら、アルミスの元に向かって歩いていく。

 膨れ上がった力を制御しているのはこの僕だ。


「……ッ」

 

 アルミスが弾かれたように僕の方へと視線を上げる。


「な、何の、つもりなの……?」

 

 アルミスは僕と一緒に結構戦っている。

 僕の力の……アレイスター家独特の力のオーラを知っていて、今、アルミスの力に干渉しているのが僕の力だとわかっているのだろう。


「別に?僕は僕の目的のために動いているだけだよ」

 

 僕はしゃがみ込み、マルボリの体へと手を触れる。


「目的……?」


「ッ!?!?あなたッ!?」

 

 僕の言葉にアルミスが首を傾げ……そしてマキナが激高して僕の方へと掴みかかってこようとするも……弾き飛ばされる。


 僕の力ではない。

 

 マルボリの力だ。


「なっ……なっ……なっ!?」

 

 ゆっくりとマルボリの体が浮かび上がり、膨大な力を……神の力を撒き散らす。

 その力はマキナよりも遥かに大きい。


「……ァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 マルボリの口から言葉が漏れ……その体から絶望的なまでの絶対の力漏れ出る。

 

「くくく……」

 

 今、この瞬間。

 悪性の邪神が復活した。

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