第44話

「何が、何が起きている!?」

 

 辺境伯は……首だけになった辺境伯はあいも変わらず声を上げる。

 死ぬ様子も、弱っていく様子も見られない。


「……なぁに簡単な話です。魔法です。便利でしょう?魔法」

 

 さっき作った毒と僕の魔法の組み合わせ。

 首だけの状態でも生かす魔法。拷問などに非常に便利な魔法である。


「ふふふ。それでさっきは随分と面白い話を言っていましたね」

 

 僕は笑顔を浮かべ、告げる。


「私が一番?何も知らないガキ?くくく。実に愉快です」


「何をッ!?……不意打ち!?卑怯だぞ!?貴様!?」


「卑怯も何もないでしょう。不意打ち程度いつでも対応してください」

 

 辺境伯の首を動かし、僕の瞳を見えるようにしてあげる。


「ねぇ?」

 

 僕の両目に紫色の光が灯る。


「ッ!?貴様……ッ!?まさか!?紫紺の死神ッ!?」


「ふふふ。あなたは少し。真面目すぎるのです。辺境伯など……所詮はお飾りにすぎませんよ」


「何?」


「我が国の国防を担当しているのは暗殺者です。敵国の王家を皆殺しにした時点で我々の勝利です。貴族の屋敷でパーティーをしたように他国の王城で容易くパーティーをすることが出来るのですよ。馬鹿なりに戦争が起きぬように努力したのは認めますが……無駄、ですよ」


「な、何を言って……!?暗殺者が国防をッ!?腑抜けたことをッ!?では、我ら辺境伯は一体何のためにッ!?」


「民の安心のためですよ。我々暗殺者は表舞台にそう出ません。一番有名である僕ですらそこの二人が知らないくらいの知名度なのです」

 

 僕が紫紺の暗殺者ということにこれ以上ないくらいに驚いているグスタフとマリアを示す。


「そのためですよ。強そうな人を適当に国境において民を安心させる。そのためにあんたたち辺境伯が居るのです。……あなたたちは、もとより国防としての期待をされていない……無駄なんですよ。あなたのしていることは」

 

 僕は立ち上がり、転がっている辺境伯の体の方へと向かう。


「はっきりと言いましょう。動くな、無能。我が国の優秀な人材を他国に渡す理由などない。さっさと帰れ。無能。彼女は僕のものであり、この国のものだ」

 

 辺境伯の体を立たせ、首を嵌めてあげる。


「では、さようなら」

 

 僕は普段通りに戻った辺境伯の体を押し、転ばせる。


「無能くん」

 

「……ッ!!!」


 すべてを。 

 僕の殆どすべてを開放する。

 生徒会室一帯を僕の魔力が包み込み、空間すら捻じ曲げて圧倒的な力が支配する。

 そのあまりの力の差に、辺境伯は抵抗する意思など失った。

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