第45話

 生徒会長のイベント。

 辺境伯は超頑固で頭が硬くてアホだけど、国を思う気持ちだけは人一倍あり、強い信念を持っている辺境伯。

 生徒会長を無理やり他国のデブでブサイクなおっさんと結婚させようとした辺境伯。

 それに対して主人公が強い意思で挑み、なんやかんやあって辺境伯と戦って自分の覚悟を見せて、辺境伯に認めてもらって生徒会長を託されるというなんか良い感じで終わるイベントだ。


 まぁ、その後辺境伯はエルピスに殺されるんだけどね。

 辺境伯の首を持って登場したエルピスの衝撃は大きかったね。うん。


 結構良い感じの、結構長い感じのイベントだったけど、


「あぁ……」

 

 爆速で終わりそうだった。


「わかったか?所詮貴様は井の中の蛙に過ぎなかったのだよ」


「……私は、王家に託されて……」


「何も託されてなどいない。国防など、貴様がいなくとも、貴様が動かなくとも機能しているのだ。長年我が国が戦禍に巻き込まれず、中立国の大国として君臨し続けられたのは我らのおかげだ」

 

 この国はずっと戦争をしていない。

 敵国に攻められることもなければ、こちらから攻めることもない。

 戦争を挑んだ瞬間に王家皆殺しにしてくるような相手と戦争なんてできない。

 逆にこちらから戦争をしかけて軍対軍の戦いになると僕たちアレイスター家はさほど力を発揮できないのだ。

 たとえ10万人に囲まれたとしても一週間飲まず食わずで戦い、殲滅出来ることが出来るけれども時間がかかりすぎる。

 

 ちなみにこの世界だとただの一般平民も魔法を使って戦うことができるため、騎士だけが戦争するのではなく、ナポレオンのように国民全員が戦う国民戦争となっている。


「そう、だったのか……我々の行いは……」


「全て無駄だとも。貴様は余計なことをする必要などない。貴様はただ、民衆の旗印として。強大な一人の男として辺境に立っているだけで良いのだよ。貴様に求められられているのはそれだけだ」


「そう、か……そうだったのか……我々は必要なかったのか……我が家の努力は、要らなかったのか」


 辺境伯の全身から力が抜け、へたり込む。

 すべてを理解したのだろう。


「……すまなかったな……アルハ……」

 

 そして生徒会長へと視線を送り、頭を下げた。

 

「それではこれで私は失礼する……」


 その後辺境伯は弱々しい足取りで生徒会室から出ていった。

 ……これで良いだろう。


「ねぇ、生徒会長」

 

 僕は生徒会長へと視線を向ける。


「これから忙しくなるよ?ちゃんと僕についてきてね?」

 

 生徒会長に溢れんばかりの笑顔を見せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る