第43話
「……やりにくいな……」
辺境伯は一息つき、そして話し始める。
「私の話は簡単だ。大人しく結婚に同意しろ」
「……ッ」
辺境伯の言葉に生徒会長は体を震わせる。
実は生徒会長には婚約者とは言えないけれども、限りなく婚約に近い人がいるのだ。
生徒会長はそれを全力で嫌がっているんだけどね。
「知っているか?貴様の横の女には結婚相手が存在しているのだ」
辺境伯の言葉。
「知っているが?」
それに対して僕は平然と頷いた。
「……ふぇ?」
生徒会長が視線を上げ、僕の方に向けてくる。
「あまり僕を舐めるな。貴様が来ることも、その用も知っているとも。生徒会長の結婚相手は南で国境を接しているスメリア国の公爵位の男であろう?大方、あの事件のせいで今、南方が揺らいでいる。それを契機としてスメリア国が我が国へと侵攻してくることを恐れているのだろう?」
辺境伯は頭まで筋肉に犯されていて、なおかつ自分の考えを曲げることのないゴミのような頑固親父なのだ。
「僕はすべて知った上で言っているのだよ。……僕は僕以外が生徒会長の表情を曇らせることを認めない」
「はぁー」
辺境伯は僕の言葉を聞いて深々とため息を吐く。
「何も知らないガキが」
僕以上に精通している人はいないけど。
「世界は綺麗事だけではまわらないのだよ。何の犠牲もなしに国を守れん。我ら貴族は平民のために自らの命を!魂を捧げる必要がある!……それを……却下するなど言語道断である!」
辺境伯は強い言葉で告げる。
「……全く。何故私がこんなクソガキと会話をせねばならぬのか……これも全て勝手に逃げたお前のせいだぞ!」
生徒会長のことを辺境伯はじろりと睨みつける。
「……っ」
生徒会長はそれに体を震わせ、僕に身を隠す。
「この生徒会室では確か実力至上主義なのであろう?であるのならば私が一番だ……有無は言わせん!」
辺境伯はそう話し、席から立ち上がる。
「……キャ!」
そして生徒会長の腕を掴み、強制的に引っ張り上げる。
「離して!」
それに対して生徒会長は魔法を発動させる。
「無駄だ」
辺境伯は発動仕掛けていた魔法の魔法術式へと干渉し、霧散させる。
「大人しく従え!」
「……え?」
僕の声が。
「従うのはあなたでしょう?僕こそがこの場で最強ですよ?」
僕は笑顔で頭を撫でる。
「……ァ?」
血飛沫が上がる。
悲鳴が、上がる。
ゆっくりと体は倒れ、床を赤く染める。
「そう思うでしょう?辺境伯閣下」
僕は首だけとなった辺境伯の頭を優しく撫でた。
「なっ……にが?」
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