第47話

「やぁ、カレア。どうだい?今の所は」


 僕はとある密室でカレアに声をかける。


「何事もなく進んでいます。生徒会にあなたが所属されていることに反応し、警戒されているようですが……それでも黙認しているようです。南方を王家の直轄地とし、各方面を刺激するのを避けたようです」


「まぁ、だろうね。南方の領土すべてを王家直轄地とするなど他の地方貴族、辺境伯たちが許さないだろうからね。……うちの領土の人を一人でも傷つけるわけにはいかない……上手く行っているようで良かったよ」

 

 上位の王侯貴族たちはまだ、アレイスター家が本格的に叛意を抱いているとは思っていないのだろう。

 当然だ。

 もう何百年と耐え続けているのだ。

 ずっと不遇の立場で甘んじているのだ。

 既に豊かだった頃の話など忘れているのだ。

 彼らは既に我らアレイスター家を道具としすぎた。その感覚に慣れすぎているのだ。


「リリカのもとに下らなかった生徒はいるか?」


「二人ほど」


「どちらも対処可能か?無理ならこちらで対処するが」


「いえ。何も心配は要りません。こちらで対処可能です」


「承知した」

 

 生徒会主導による南一帯の統治。未だ学生でしかない子供たちに統治を任せるという馬鹿げた行い。

 だがしかし、今。これが果たされようとしていた。


 ちなみに既に南の貴族の当主たちは軒並み処刑されている。

 証拠も、証言も、全て揃えたからね。僕が暗殺した混乱に乗じて。

 これで各地域の貴族たちが動くことはなくなるだろう。そして、不満を内部にだけ溜め続けることになる。

 すべて想定通りだ。


「それでは僕は国王に会ってくるよ」


「いってらっしゃいませ」

 

 カレアは深々と僕に頭を下げた。

 

 ■■■■■


 既に腐敗しきっているこの国。


「やっほー」


 その腐敗の大元は王家ではない。


「……やぁ、よく来たね」

 

 大元は公爵家当主やご意見番と呼ばれれている老人会、五賢会にある。

 現国王は僕の手の元だった。


「元気している?」


「えぇ。何の問題もなく生活させてもらっているよ。……君のおかげでね」

 

 嘘はなし。

 敵意なし。

 叛意ない。


「裏切っていないようで安心したよ」


「君を裏切るなどありえないよ……私のなど君を恐れるあまり神とまで崇めだしたぞ……」

 

「ははは」

 

 僕は国王の言葉に苦笑する。


「じゃあ、いつもどおり僕からの命令。君はいつもどおり臆病でヘタレな傀儡として動いていて」


「あぁ……そうさせてもらうよ……今回の件を後押しするのにどれだけの勇気を振り絞ったか……」


「いや、それくらいは頑張って?」

 

 僕はヘタレ全開の国王にため息をついた。


「よし。じゃあね」

 

 そして、僕はサクッとこの場を離れた。あまり長居するわけにもいかないしね。

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