第42話

 簡単な理屈だ。

 幻術で自分の代わりを作り戦わせ、本体は準備に時間がかかる封印術の準備を行う。

 そして、最後に背後からぶすりと。

 これで終わり。実にきれいな戦い方だったな。


「なるほどね。……確かにあの戦い方はメトとは相性が良くないな」


「だろう?」

 

 僕は生徒会長の言葉に頷く。

 脳筋スタイルのメトとは相性が致命的に悪い。


「それに封印術とは……便利なものだな」


「僕があれに固執する理由だよ。……実に面白い魔法だろう?」


「あぁ……まったくもってそのとおりだ。だが、それは随分と初見殺し性能が高い。次の相手に勝てるかな?」


「さぁ?そんなもの知らん。次の対戦相手の強さなど僕は知らんからな」


 別に仕事モードじゃないし、いちいち他人の強さなど気にしない。

 生徒会メンバーの強さは会長と副会長以外重要じゃなかったし、ゲームでも。


「そう……くくく。次はレルミンだ。見ものだな」


「そうか」 

 

 僕は生徒会長の言葉に頷いた。

 アルミスの封印術を見れただけで十分だ。一度見てみたかったのだ。封印術。

 

 レルミンとアルミスの戦い。

 アルミスはメトから拝借したメイスを。レルミンはレイピアを構える。


「メイスでいいのですか?」


「あぁ。構わん。俺はどんな武器でも使えるように鍛えている。俺は一つの武器を極めて戦うタイプじゃない。搦手を得意とする器用貧乏タイプだからな」


「そう……じゃあ、やりましょうか」

 

 レルミンが一瞬でアルミスとの距離をつめる。

 アルミスはそれに土の壁を作り対抗する。


「『雷塔』」 

  

 レルミンはそれを容易く雷で突き破る。

 そしてそのままレルミンはアルミスの体を突き刺した。


 バシャ

 

 アルミスの体は水となって落ち、地面を濡らさない。

 何も残さず消えていく。


「なるほど……幻術。これは厄介ですね。……ですが、種が割れていれば対処など幾らでも出来ますね」


 レルミンの周りに魔力が貯まっていく。


「終わりだな」


「だね」

 

 僕と生徒会長が声を合わせて告げる。

 レルミンが何をしようとしているのかを察したアルミスが慌てて行動を始めるが、もう遅い。


「『雷激雨』」

 

 大規模な範囲魔法が発動し、雷の雨が降り注ぐ。

 どれだけ幻術で居場所を誤魔化そうとも、逃げられない範囲の魔法を使われてはどうしようもない。


「くっ……」

 

 アルミスを雷が直撃し、その体をゆっくりと倒した。

 

「終わったな」


「まぁ、だろうな。予想は出来ていた」

 

 封印術には時間がかかるし……対個人戦よりも集団戦でこそ光るな。あれは。

 実に面白い魔法だった。見たことなかったから新鮮だった。

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