第12話

 どうやら……僕はそんなキャラに転生してしまったらしい。

 今までは気の所為だと笑い飛ばしていた可能性が……確定的なものとなってしまったのだ。

 

 アレイスター家。確かに名前は同じだった……だからこそ偶然だと思っていた……。自分の名前は『ニク』であり『エルピス』ではない。それを根拠に。父親も母親もゲームでは顔にモザイクがかかっていて、どんな顔かわからなかったし。

 ゲームの世界に転生するとかあるわけがない……そう、信じていた。現実から目を背けていた。

 自分が……死ぬ運命が確定しているキャ……あれ?

 

 ん?……別に確定していなくね?

 エルピスの回想を見る限り、幼少期にエルピスはリーリエと出会っていないし、生まれたときからずっと魔力を使っているわけじゃない。


「ん???」

 

 僕は首を傾げる。


「おやぁ?おかしいっぞぉ」


 ……ゲームでの未来はすでに決まっている。しかし、別に今僕の未来が決まっているわけではない。

 今、ここで僕が死ねば運命は変わるだろう。

 

 エルピス・アレイスターに転生したことで気が動転しすぎていて……未来は決まっていない、という誰でもわかるようなことを理解していなかった……。

 馬鹿か?僕は……。

 普通に考えてあらかじめフラグを叩き折っていけば解決することじゃないか。

 

 ヒロインを攻略しなきゃいい話、勇者と戦わなければいい話、魔王を殺さなきゃいい話。

 普通にフラグを叩き折るくらい造作もないだろう。


「はぁー」

 

 僕は大きなため息を吐く。

 まさか自分がこんなにも馬鹿だったとは……。確かにエロゲ好きの引きこもりではあったものの、地頭は良いと自負していたからな……。

 

「……お父様に改心してもらって、ヒロインたちと関わらなければ僕がフラグを踏んで悪役となることはないだろう」

 

 当然死ぬことも。

 ……一体何を悩んでいたのか……自分がわからなくなる。

 

 ヒロインたちと関わらない……推しとかもいるし、関わらないというのは悲しくはあるが……この世界の住人の見た目は全員良いので、 別にヒロインと関わらなくとも幸せな生活を送れるだろう。この世界では地味めであんまり可愛くないという子ですら、地球の女優レベルなのだ。

 どんな人と恋仲になっても僕にとって最高の恋人だろう。

 それに、別に恋人を作らなくとも娼館で事足りる。


「ぐへへ」

 

 僕はこれからのことを思い、笑みを浮かべる。

 こう思うと最高じゃないか。この世界のことは僕が一番知っている。そんな世界で無双して、女の子を抱きまくる。……神か?

 

 ……んー。何か忘れている気がするのだけど……なんだろうか?

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