第16話

「ひどい……」 

 

 僕は瞳から涙を流す。


「「「……ッ!?」」」

 

 それを見て周りを取り囲んでいる民衆は驚愕し、狼狽え始める。

 ……思っているよりも僕への当たりが柔らかいな。もう少し僕への当たりが強いと思っていたけど……。

 まぁ、罪人の処刑を娯楽として楽しむような文化圏だ。

 暗殺者として人を殺し歩いていることにあまり嫌悪感を持っていないのだろう。

 地球とは違うね。

 ……未だに地球の頃の感覚が完全になくなっていなくて、嫌になる。


「僕が……お母さん……殺すわけ……」


 涙を流しながら僕は途切れ途切れに言葉を告げる。


「なら……!なんで詳細が言えないんだよ!やましいことがないなら言えるはずだろ!」

 

 一番最初に僕を母親殺しだと告げた男がさらなる言葉を告げる。

 それに対して、他の民衆たちはそんな男に対してものすごい視線を向けられる。


「な、なんだよ……俺は正しいことを話しているだけだッ……」

 

 ほとんどの民衆たちが完全に僕の味方となってくれているようだった。本当にありがたい限りである。


「……だってッ……だってッ……言ったら領民が……ッ!!!」


 僕は笑いが止まらない内心を押し隠して、かすれた絶叫の声を上げる。

 

「……?領民がどうなるんだ?」


「殺されるんだよッ!!!五賢会の命令で動く騎士連中が僕の領民を虐殺して歩くんだッ!!!」

 

 僕は絶叫する。

 心の底からの絶叫を口にする。

 そして、その次の瞬間。


「エルピスッ!!!」


「風よッ!!!下がりなさいッ!!!」

 

 学院の方から生徒会の面々が出てきて、僕の身柄を奪い取ってそのまま拉致していく。

 ナイスタイミングだよッ!ベストタイミングだ!

 ここまで完璧な流れになるとは思わなったよ!


「あッ!待てッ!!!」


「また貴族共は俺ら平民には何も伝えないつもりかッ!!!」


「お前らなど信じられるかッ!!!」

 

 それに対して民衆たちが怒りの声を告げるも、それは完全に黙殺されてしまう。

 民衆を無視して学院は門を閉ざし、結界が招かざる客人をはねのける。

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