第17話

「エルピス……」

 

 学院の廊下で僕を運んできた面々が僕に何とも言えない視線を向けてくる。

 サブマ、リーリエ、ラザリア、キャサリン、アルミス、ミリア、生徒会長。

 生徒会メンバー、フルコンボでいる。


「うし……」

 

 僕はサクッと涙を指で拭い、表情を変える。

 感情を消す。


「ミリア。動くぞ。……暗殺の時間だ。五賢会を減らしていく。あいつらについての情報をやり取りしてもらう。一人は無理だけど……他の四人はお前でも行けるはずだ」

 

 さっきまでの哀れな被害者の表情など捨てる。

 生徒会メンバであるこいつらの前で今更演技の必要なんてないだろう。


「……え?」


 僕の言葉に対して周りのみんな……生徒会長以外が驚きの声を上げる。

 ……ミリア、アルミス……お前らもか。


「え……?さっきまで、泣いてて……」


「……嘘泣きに決まっているだろ……ガチで泣く奴が居るか」


 僕は二度と本気で泣くことはない。

 泣いている僕は全て演技だ。演技でしかない。


「え……?」


 僕の言葉に対して生徒会長以外の全員が驚愕し、呆然と口を開ける。


「そもそもの話、僕が母親殺したのは事実だしな」


「え……?」


 僕の言葉に対して生徒会長以外の全員が驚愕し、呆然と口を開ける。

 ちょっと驚きすぎじゃない……?


「ったく。僕についてはどうでもいいんだよ。さっさと動かな……あ?」


「……っ」


 動き出そうとした僕の体をリーリエが優しく抱き締めてくる。


「……何?」


「……」


 怪訝な表情を浮かべる僕に対して、リーリエは無言を貫く。

 ただただ無言でリーリエは僕のことを抱きしめ続けていた。

 ……。

 …………。

 僕は沈黙を保ち続ける。

 何も答えることが出来ない。

 跳ね除けなければ。

 リーリエを跳ね除けて、僕は自分の仕事をこなす為に動き出さなきゃいけない。

 ……だけど……だけどだけどだけどだけどだけどだけどだけどだけど。

 僕はリーリエのことを跳ね除けることが出来なかった。


「あっ……」


 そして何故か僕はそのまま崩れ落ち、膝を床へとつけてしまった……。

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