第21話
魔天草によって作られた特効薬を届けるという依頼。
この依頼はサブクエストではあるのだが、結構重要なクエストとなっている。
まず病にかかっている少女なのだが、この子は魔族と人間のハーフとなっている。この少女の父親が魔族なのだが……実はかなりの高位魔族であり、魔王軍に存在している5つある軍集団のうち一つの軍団長を勤めている。
多分だけど、ルートの一つに魔族との共存ルートも用意されていると思う。
そして、魔族との共存ルートに必要不可欠なのが、この少女だ。
個人的な目的のため……出来れば魔族との共存ルートを選び、魔王様を味方としたい。
今、ここで少女を殺すような真似をあまりしたくはない。
そのため僕はそこそこ真面目に今回の件について臨んでいた。
「オェ、オェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
だが、そんな気持ちも今の光景を目にして失せてしまった。
「……ォエ……ゲェー」
ツンと鼻を突き刺すような酸っぱい刺激臭が漂い、あたりを汚す。
「はぁ……はぁ……はぁ……すみま、せん……うっ」
再び胃の逆流が起ころうとしていた。
「オェ、オェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
再び吐き出される物体。液体。
立ち込める異臭。
「何をしているんだし……」
僕はミリアへと呆れたような視線を送った。
「……う、うぅ……すみま、せん……私のせいで……」
思いっきりゲロを吐き散らかしている少女……それはミリアだった。
ミリアは馬車に乗って少し揺られただけで全力で胃の中のものを戻してしまったのだ。
……この世界の移動手段は基本的に馬車である。……馬車に乗れないというのであれば、こいつは一体今までどうやって移動してきたのだ?
「……今、思えば……馬車に乗るのが初めてで……」
ミリアはそう呟く。
……マジかよ、こいつ。馬車に乗ったことないってそれはつまり王都以外の街に行ったことが無いってことじゃないか。
どんな甘ちゃんだよ……。
こいつを暗殺者として育てられるのか、心配になってきたよ……
「す、すまない……俺が乗り物酔い用の回復魔法を使えていたら……」
サブマは気休め程度の魔法を使って回復させる。乗り物酔い用の回復魔法もあるのだが……それをサブマは使えなかった。
「大丈夫かしら……?辛くない?片付けは私がするから……」
ミリアが吐いたゲロの後処理はラザリアが魔法で行っていた。
……このままじゃ依頼人のもとになんて到底辿り着けないぞ……。
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