第22話
「ねぇ……あなたは何か出来ないの?」
せっせと片付けをしていたラザリアがこちらへと視線を向けてくる。
その表情はこれ以上無いくらいに歪んでいた。
「これ以上……苦しむ姿なんて見たくないんだけど」
「……はぁー」
僕は深々とため息をつく。
「すみ、ません……」
「やるかぁー」
「最初から何か出来るならしなさいよ!……あなたの、なんでしょ?」
「ァ?僕に何か出来るわけがないだろ」
僕はラザリアの言葉を切り捨てる。
「言ったはずだろ……この世界の闇はお前が思っているより深い、と。うちの一族は普通じゃないんだよ。本来僕は馬車にすら乗れん。馬が怖がってまともに機能しなくなるんだよ。……そんな中無理やり封印魔法で僕という存在を封じて乗っているんだ。今の僕は空間魔法一つ使えやしないよ」
僕の力、強さ、便利さ。
僕のこれらはすべて空間魔法によって支えられていると言っても良いだろう。
一応雷神レベルに雷魔法を修めてはいるものの……そこまで驚愕するほどか、って聞かれるとそうでもない。という答えになってしまう。雷魔法の使用にも空間魔法を応用するし。
というか、そもそも僕の能力は殺すことに特化している。
乗り物酔いをなくす……なんて能力があるわけがない。僕は多彩な技、便利な技なんて持っていないのである。
「……なんとかできるのは僕じゃない、が。まぁ僕のコネでなんとか出来る。……お前らは先に行っていろ」
僕は酔いまくっているミリアを封印して、動きを止めさせる。
ミリアに反抗する意思はない。反抗する意思のないものを封印するのは簡単だ。
「……わかったわ」
一番強硬に反対すると思われたラザリアが一番最初に頷く。
「あなたの異常さなら私も……間近で見ているからね。あなたに任せたほうがその子のためになることくらいわかっているわ」
ラザリアはとんでもない表情を浮かべながら告げる。
「エルピスがなんとか出来るというのであれば……」
「エルピス君なら何の問題もないよね!」
僕を一番嫌っているラザリアが了承し、その後すぐに他の二人も了承する。
「おう。じゃあさっさと行け」
僕は馬車に乗って走り去っていくサブマたちを見送る。
「絶っっっっっ対に!傷つけるんじゃないわよ!!!女の子は繊細なんだからね!!!傷つけたら絶対に許さないんだから!!!」
うるせぇ。
お前は一体ミリアの何なんだ?僕はご主人さまだぞ?ミリアの。
「わかったか!この最低男!!!」
「ふわぁー」
僕は離れていくラザリアのバカでかい声を聞き流しながら、ミリアの方へと視線を向けた。
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