第23話

「よっしょ」

 

 とりあえずミリアの封印を解除する。

 ついでに自分の力を封じている封印も。


「大丈夫か?」


「うぅ……本当にすみません……エルピス様ぁ」


「別に構わん。とりあえず吐けるところまですべて吐いてしまえ。そして、酔いを完全に直せ。……話はとりあえずそれからだ」

 

 僕たちが居た場所は道から少し外れた森の方。


「ほっ」

 

 僕は木の枝の方に飛び、腰掛ける。


「お手数おかけします……」

 

 しばらくの間。

 ミリアが元気になるまで僕は待つ。 

 

 

 

「だいぶ……良くなりました」

 

 ミリアのその声を聞いて閉じていた瞼を開き、飛び降りる。

  

「おう」

 

 とりあえずは下にあるゲロはすべて空間魔法で排除する。

 匂いも風魔法ですべて散らしてしまう。


「大丈夫そうだな」


 顔面蒼白だったミリアの顔色も良くなってきている。


「はい……お手数おかけしました……」


 ミリアは僕に向かって頭をゆっくりと下げた。


「別に気にすることではない。さて、と……僕らも向かわねばだな」

 

 僕は一言告げる。


「はい……それで、どうするのでしょうか?……走っていくのでしょうか?」


「……?」

 

 とんでもないことを抜かしやがるミリアに僕は信じられないものを見るような視線を送る。


「無理に決まっているだろう……僕にそんな体力はない」


「えぇ!?」

 

 僕の言葉にミリアは目を見開いて驚愕する。

 ……おい。いつもの無表情は何処行った?お前の無表情はこれで崩れるというのか?


「暗殺にそんな体力は要らんだろ……暗殺など、一瞬で終わる」


「いや……確かにそうですけど……ですが、ねぇ?」


「お前は僕を何だと思っているんだ?一体……」

 

 僕はミリアの言葉に苦笑する。過小評価されるのも困るが……過大評価されるのはもっと困る。


「……もっと簡単な行き方があるだろうに」


「簡単な行き方、ですか?」

 

 僕の言葉にミリアが首を傾げる。

 ……え?こいつ心当たりないん?


「以前生徒会で作ったあれがあるだろう?あれを使うんだよ」


「えぇ……?あの不良品を使うんですか?」


「不良品って言うなよ!!!」

 

 僕は不良品。そう告げるミリアの言葉に噛み付いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る