第24話

「ほ、本当に大丈夫なんですか……?」


 心配そうなミリアの言葉。


「大丈夫だから!」

 

 それに対してそう言葉を返す。


「前回のあれは生徒会長の炎が強すぎただけだから……理論上は確実に行けるの」

 

 不安そうなミリアを押し切り、僕は作業を続ける。

 ……作業と言っても対してやることがないんだけど。


「良し、準備完了。乗るよ」


「ほ、本当に、ですか?これを使うんですか?あ、安全性は……」


「良いから乗れよ。というか落ちても平気だろ」


「うぅ……」

 

 僕は躊躇しているミリアを強制的に乗せてしまう。


「あぁ……」

 

 僕が移動に使おうとしているもの……それは気球である。

 暗殺者として使うにはあまりにも派手すぎるが、ただのプライベートで使う分には決して構わないだろう。


「う、浮かんだ……」

 

 僕の魔法によって生み出された炎に照らされた気球はゆっくりと高度を上げていく。


「第七階位魔法『風域操作』」

 

 僕は辺り一帯の風を完全にコントロールする。

 風を操り、気球を目的地の方向へと進めていく。

 その際に気球が揺れないように細心の注意を払う。

 ……まぁ、気球で酔うなんて話は聞いたことがないが……万が一のために一応対策をして置いたほうが良いだろう。

 ここで吐かれるのは非常に困る。


「ひぃぃぃぃぃ」

 

 空高くに浮かび上がった気球。

 それに乗ったミリアは悲鳴を上げて、縮こまる。


「顔を上げて遠くを見てろ」


「む、む、む、無理ですよぉ……た、高いところ無理なんです」


「お前……弱点多すぎじゃね?」

 

 ミリアの言葉を聞いた僕はぽつりと言葉を漏らす。……どう考えても弱点が多すぎである。

 本当に暗殺者として育てて良いのか?

 僕のように各種制約がある暗殺者ってのはかなり不利なのだが……まぁ、王都にいる上位の王侯貴族たちなら殺せるか。


「ごめんなさい……」


「まぁ、良い。このまま行く。そこまで場所が遠いわけじゃないからな。そのまま顔を抑えていろ」

 

 僕はミリアにそう話し、気球の速度を上げた。

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