第25話

「……良し、降りるぞ」


 目的地の上空にまで来たことを確認した僕はミリアにそう告げる。


「へ?」

  

 僕の言葉を聞いたミリアが呆然と声を漏らす。

 

「降りる、ですか……?どうやってでしょう?」


「普通に降りるだけだよ」


「ふ、普通に?」

 

 僕の言葉をミリアは頬を引きつらせながら聞き返してくる。


「ほいさ」

 

 僕は空間魔法を発動し、気球を消滅させてしまう。


「このまま」




「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 


「うるさっ」

 

 この場に響き渡るミリアの大きな悲鳴。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!死ぬ!!!死ぬ!死んじゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!」

 

 悲観的な絶叫。

 いつもの無表情など何処へやら。

 全力の恐怖を表情に浮かべて、ものすごい勢いで降下していた。

 ……君の無表情取れ過ぎだよ?


「……死なないよ……」

 

 僕がちゃんと魔法を使って操作している。

 死なないように。今も落ちるときの風圧を操作して何ともないように操作しているしね。


「いやいやいや!」

 

 ちゃんと根拠を持って告げられた僕の言葉をミリアは勢いよく否定する。


「無理でしょ!?これは無理でしょ!?やっぱり殺そうとしたの恨んでいるんだ!だから私を殺そうと……!」


「……だとしたら何で今殺すんだよ……殺すならあの場で殺す」


「じゃ、じゃあゲロが……」


「ゲロ程度でそんなにしねぇよ」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!もう地面があんなに近く」


「はぁ……」

 

 これじゃ着地できそうにないな。

 僕は空間魔法を使って地上まで転移。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ」


「ほい」

 

 そして、僕は落ちてくるミリアをお姫様抱っこのような形で受け止めた。


「ほれ。大丈夫だっただろ?」


「……もう二度と乗りたくない……」

 

 君が馬車乗れないのなら、またこの気球を使う機会ができそうだけどね。

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