第3話

「第十二階位魔法『神雷』」

 

 パチパチと電撃の音が鳴る。

 白銀の雷光が世界を歪める。

 神の雷。

 魔法が最高位、第十二階位の魔法。万物を破壊する最強の雷。

 僕はそれを至極当然のように発動し、顕現させる。


「……さすがね」

 

 そして、それに対抗するようにマルジェリアも魔法を唱え始める。

 巨大な魔法術式が描かれ、結界が出来上がる。


「第十二階位魔法『我が世界』」

 

 マルジェリアもまた第十二階位魔法を発動させる。

 大地が美しい花々に彩られ、辺り一面に花の良い香りが撒き散らされる。

 ……この香りを嗅いだだけでデバフと毒をつけてくる害悪魔法だが。

 絶賛現在進行系でこの香りを嗅いだ僕のステータスは大きく下がり、毒のダメージを受け続けている。


 世界魔法。

 構築するのに長い時間を必要とするこの魔法を短時間で発動させる魔法の技量は末恐ろしいものがあるな。

 世界魔法の効果は多岐に渡る。個人によっても能力、効果は様々。

 マルジェリアの世界魔法がどんなものか。僕は理解出来ていない。……細心の注意を払う必要があるだろう。


「じゃあ、行くよ」

 

 僕は転移魔法を発動させる。

 転移先はマルジェリアのすぐ前。

 結界なぞ素通りだ。

 僕は神雷を纏った右手をマルジェリアへと突き出す。


「花よ」 

 

 僕の一撃は、確実に当たった僕の魔法はだがしかし。


「ん」

 

 僕は空間歪曲魔法を発動させ、マルジェリアの首を吹き飛ばそうとするも結界魔法によって防がれる。

 結界魔法の原理は空間の固定による揺るがぬ『永久』。

 原理的には僕の空間魔法でさえも防ぎうる。

 防げるやつなどそうそういないが。


「『萌芽』」

 

 僕は魔法を発動させる。

 マルジェリアの服に置いてきた小さな紙の花が咲き、辺りの空間をまとめて飲み込んで枯れる。


「あぶっ!?」

 

 紙の花の枯死による空間崩壊。マルジェリアはその範囲から逃れ、慌てたような表情を見せる。

 空間崩壊には花が巻き込まれた。


「……面倒な」

 

 僕はそれら一連の動きを見て、マルジェリアの『我が世界』を理解する。


「これらの花はすべてマルジェリアか」

 

 この花一つ一つがマルジェリアという存在であったかもしれない存在。

 そして、目の前のマルジェリアという存在は花であったかもしれない存在。

 仮定は変化する。存在は移り変わる。

 若干シュレディンガーの猫的な感じを感じるな。……ちゃんと観測しているんだけどなぁ。

 なんて面倒な世界だ。信じられない。


「御名答。よくわかったね。単純だけど理解し難い効果だと思っているのだけど」


「似たような例を知っていたからな」

 

 僕は肩をすくめて答えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る