第28話

「あー。明らかに僕だけで出来る仕事の量じゃないんだよなぁー。あぁー!」

 

 僕は叫びながら手を動かし続ける。

 今、僕の前に置かれているのは大量の書類の束。全部テストの答案だ。

 一年生、二年生、三年生。

 全学年分が今、僕の前の前に置かれている。僕はこれらすべての丸付けを行っているのだ。

 

 ここで僕を手伝うべき生徒会長はここには居ない。

 なんか連絡しなきゃいけない相手が居るらしくて、今、席を外しているのだ。

 ……今、というかここ最近ずっとなんだけどね!

 あいつには自分が生徒会長だという自覚があるのか?


「……すみません。私も何かお手伝い出来れば良いのですか」

 

 僕の隣で給士をしているミリアが申し訳無さそうに告げる。

 ミリア。

 彼女の機転のIMSはE。S、A、B、C、D、E、FとあるIMSのうち、下から二番目。生徒会メンバーだと最底辺。

 彼女の頭は僕がびっくりするくらいには硬かった。

 ……暗殺者として機転が利かないのは割りと致命的なんだけど……。まさかミリアにこんな弱点があるとは思わなかった。

 

「お前には出来ないな」

 

 僕はミリアが入れてくれたコーヒーを飲みながら丸付けを進めていく。

 

「ふー。この後は戦闘力の方も図らなきゃいけないんだよな……一体いつまでかかるんだ……」

 

 ぶつぶつと独り言を呟きながら

 ……対価を貰っている以上は真面目にやるけどさ……ゲームの最押しとするのは興奮したし……。

 ちょっとカレアでも呼ぼうかな……。

 カレアを始めとしたアレイスター家に使える一族なのであれば、超級者用の問題はともかく、上級者用の問題までならば問題なく丸付けを行うことができるだろう。……やっぱり呼び寄せて、押し付けるべきなのかもしれない。

 

 出来もしない馬鹿なことを考えながら丸付けを進めていく。

 僕があくせと頑張っていると、生徒会室の扉が開かれる。


「生徒会長!?」


「お前の愛しの生徒会長じゃないよ」


「ちっ」

 

 生徒会室に入ってきたのは生徒会長じゃなくて、アルミスだった。

 

「使えないゴミか……」


「くくく」

 

 アルミスは生徒会室に入ってくるなり、笑顔を浮かべる。


「いつも苦労させられているエルピスの苦労している姿を見るのは楽しいなぁ!」


「……殺すよ?」

 

 僕はアルミスの方へと視線を上げ、睨みつける。


「……」

 

 それに対してアルミスは沈黙する。

 

「な、なぁ?」


「ァ?」


「なんで視線をこちらへと向けているのに、変わらず手は動き続けているの?見ているの……?普通に凄すぎてキモいんだけど……」

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