第29話

「すまない……全部やらしてしまって」

 

 ようやく用事とやらが終わったらしい生徒会長が僕に頭を下げてくる。

 ……ちなみに。

 ちなみだけど生徒会長の『全部やらしてしまって』の言葉通り、既に僕は丸付けを終わらせている。

 生徒会長は何もしなかった。


「あぁ、そうだね。生徒会長は何もしなかったね。な・に・も!しなかったね。戦闘力を図るのは任せたよ?」

 

 僕は笑顔を浮かべて生徒会長へと告げる。


「あぁ!私が出来る女だってことを見せてあげるよ!私だって役に立つんだってところをね!」


 それに対して生徒会長は自信満々に告げる、。


「全部お願いね?」


「……」 

 

 生徒会長の自信満々な表情がまるで石像のように固まる。

 ピクリとも動かない。

 ……。

 …………。

 沈黙がこの場を支配する。


「ぜ、全部?」

 

 そして、その沈黙を打ち破るように生徒会長が震えながら僕へと告げた。


「うん。当たり前じゃんか。全部に決まっているよね?僕も全部やったよ?」


「すまない!すまなかった!ごめん!ごめんなさい!」 

 

 生徒会長が僕へと頭を下げてくる。

 

「本当に申し訳なかった……!それでも一人は無理だ!流石に出来ない……!私一人の目利きじゃ完璧に図ることはできない!」


「知らないよ。僕は全部やったんだから、生徒会長だって全部やってくれないと困るよ」

 

 真顔で告げる僕の言葉に生徒会長はわなわなと体を震わせる。


「申し訳なかった!本当に申し訳なかった!ごめん!謝るから!いくらでも地を舐めるから!一人にしないでくれ!」


 戦闘力に関して言えば一人で目利きするのはかなり難しい。

 僕も生徒会長もかなり高いレベルの目利きを有しているけど、完璧ではない。


 暗殺者である僕の目利きの場合、殺しやすいか、殺しにくいか。この二択しか出てこない。

 学院生は全員殺しやすい。

 僕の場合は暗殺者という特殊な立場故に目利きがちょっと歪んでいるのだ。

 だから、僕一人で生徒たちの戦闘力のIMSをつけるのはかなり厳しいものがあったりする。


 生徒会長の目利きも本人が言っているように完璧ではない。


「ふふふ。生徒会長の無様な姿が見れたからもういいや。元々受けた仕事だ。ちゃんと完璧にこなすよ」


「そうか!ありがとう!」

 

 僕の言葉に対して生徒会長が笑顔を見せる。


「……なんか、エルピスかなりマイルドになっているよね?クラスとかだともっと刺々しいけど……」


 僕達の会話を聞いていたアルミスがぽつりと呟いた。


「ん?このメンツならわざわざ悪役的な口調をする必要はないでしょ?」


「……え?」

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