第54話

「はぁはぁはぁ」

 

 息を切らし、地面に座り込んでいるアレリーナ。

 服が溶け、半裸状態になってしまった自分の体を必死に僕が渡した毛布で隠す。

 

「わ、妾が……エルフが高族の一人であるこの妾が……!こんな恥辱を……!」

 

 唇を、体を震わせる。


「……え?何今の……」

 

 アルミスは一瞬で触手の化け物を殺した僕を見て首を傾げていた。


「ん?あぁ、あれらって超高密度な魔力の塊なんだよ。だから大量に魔力を流してやれば姿を保てなくて勝手に崩壊するんだよ」

 

「へぇー」

 

 僕の説明にアルミスは頷く。

 

「どれくらいの魔力を注ぎ込むんだ?あの魔物結構倒すのにも苦労するからその対象を知りたいんだけど」


「ん?そうだな……帝級魔法を使う時と同じくらいの魔力量じゃないか?」


「ほとんどの人間が使えないよ」

 

 僕の言葉にアルミスは真顔で答える。


「そうか?封印術で大量の魔力を保存してそれを投石のような形で投げればいいだけの話だろ?魔力なら理事長が提供してくれるだろう」


「なるほど……」

 

 アルミスは僕の言葉に頷き、考え込む。……こいつは自分の正体を隠すつもりがあるのか?

 僕のように正体を周りに漏洩させるつもりでなかろうか。


「……妾はフル無視か?」


 ポツリと呟くアレリーナ。


「え?その状態で構ってほしいの?見られて気持ちよくなるタイプなの?」

 

 僕はそんなアレリーナに対してそんな言葉を返した。


「死ね!そんなことないわ!ボケェ!」

 

 アレリーナが地面に落ちている石を取り、こちらへと投げてくる。

 しっかりと弱体化魔法を発動し、僕が避けられないように工夫してから。


「ほい」 

 

 まぁ、歪曲させるので何の意味もないんだけど。


「クソッ!」


「いや。わかっていただろ?」


「それでもだ!くぅ!」

 

 アレリーナが瞳に涙を浮かべ、僕の方を睨みつけてくる。


「……なに?このカオス」

 

 考えこむアルミス、毛布を羽織り涙目で僕を睨みつけるアレリーナ。

 その二人を見て生徒会長が呟いた。


「まぁ、良いわよね。私には関係ないわ。さて」

 

 生徒会長は切り替え素早く話を変える。


「何故かはわからないけど、結構強い魔物が多いのよね。だから、これからはみんなで行動することにしましょ?私やエルピスはともかく、アルミスやアレリーナが心配だわ。……そこの子はもうすでにやられているようだしね」

 

 生徒会長はアレリーナの方へと視線を向ける。


「そうだね。……そっちのほうが楽そうだしな」


 僕も生徒会長の提案に了承する。


「よし!決まりね!」

 

 生徒会長は僕の言葉を聞いて満足気に頷く。二人は意見すら聞かれなかった。

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