第55話

「……楽だな。君がいると」


 生徒会長が僕のことを眺めながら呟く。

 その声色には驚愕の色を隠せていなかった。


「確かに……さっきから全てエルピスが倒しているものな」


「くっ……」

 

 アルミスも生徒会長同様に驚きの声を上げ、アレリーナは触手の化け物によって負わされた心の傷に苦心していた。


「今の僕は目に入った魔物を全員歪曲で殺すように設定しているからな」

 

 右目の空間歪曲魔法は僕のオリジナル要素が多分に含まれた魔法だ。この術式を操作し、対象を絞り込んで自動的に殺してくれるように設定することくらい実に容易い。


「……便利なんだな。その瞳の魔法」


「そりゃ僕の代名詞だからね」


 まぁこんな魔法実際の暗殺では使えないんだけど。

 目を光らせるなど目立って仕方ない。


「……私が君に勝てるビジョンがまるで湧かないな……」


「当然だ。僕だぞ?」


「んー。これ以上無いくらいの説得力を感じる。……あぁ!だからこそ興奮するのだが!」


 暇すぎて平然と雑談をしながら森の中を歩く。


「……帰りたい」

 

 服を溶かされ、半裸状態で歩いているアレリーナはぽつりと呟く。


「明らかに私要らん。何もしていない」


 アレリーナは一人でぶつぶつと呟く。


「アルミス。なんか良い感じに魔物を集める手段持っていない?」


「なんか良い感じってなんだ!?持っていないよ」

 

「ちっ。役立たず」


「……実際に何もしていないから否定出来ない」

 

 アルミスは僕を睨みつけながらそうぼやく。


「後少しです。この森にいる魔物は後6体にございます」


 魔物の有無を確認する魔道具を手に持っているミリアが僕たちに向けてそう話す。


「というかさ。後6体ならもう生徒会長一人で出来るんじゃね?」


 思いつきの僕の発言。


「……え?」

 

 それに対して生徒会長は固まる。


「確かにな」

 

 僕の言葉にアルミスも頷き、


「帰って良いのか!?」

 

 アレリーナも食いつく。

 ミリアはもうすでにいそいそと魔物の残りの数を確認する魔道具を生徒会長に渡している。


「……え?」


 ものすごく乗り気な僕たちを見て生徒会長は固まる。


「じゃあ、解散としようか」


「了承」


「良し!」


「了承致しました」


「……え?」

 

 僕は魔法の発動を止め、帰り道を歩き始める。街はあちらだ。


「エルピス様。今日も教えを享受したく思います」


「ん?良いよー」


「あ!妾も!妾にものを教える権利をやるぞ?」


「え?その姿のままやるの?」


「や、やらない!着替えてからに決まっておろう!」


 僕たちは和気あいあいと雑談しながら帰路についた。


「……え?」


 生徒会長だけが一人残される──────。

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