第31話

「一旦二人が友達になってみたらどうかな?」

 

「うぇ?」


「……ん?」

 

 笑顔の僕が告げた一言に二人は首を傾げる。


「リーリエはあの時よりも成長したんだよね?」


「う、うん!」


「じゃあ、さ。そこの隣の男子を強くしてあげてよ。その子はカツアゲされていた可哀相な子でさ。……強くなればもう絡まれることもないでしょ?」


「そ、そうですね……」


 リーリエは僕の言葉に戸惑いつつも頷く。

 ゲーム通りの優しい子に成長しているとしたら、カツアゲされていた可哀相な男の子を救ってあげるだろう。

 

「それで、だ。そこの男の子を……そうだね。アルミスよりも強く出来ればリーリエのことを無視しないであげるよ」


「おい!?」


 いきなり巻き込まれたアルミスは驚愕の声を上げる。


「ほんと!?」

 

 だが、アルミスの驚愕の声はリーリエの大きな声にかき消され、リーリエの必死さにアルミスは反抗の意思を削がれた。


「うん。本当だよ。……だから、それまで僕に話しかけないでね?」


「わかりました!……ですから、ちゃんと達成出来たときは無視しないでくださいね!」


「うん。良いよ」

 

 僕はリーリエの言葉に頷いた。

 良し。これでいいだろう!

 主人公。成長速度が頭おかしい可能性の塊である主人公を三ヶ月も鍛えればアルミスくらい簡単に越えられるだろう。

 しかし、三ヶ月も主人公と関わっていればリーリエも僕なんかより主人公の方が良い!ってなってくれるだろう。

 普通に考えて、好き勝手している暴虐邪智な僕よりも、一生懸命頑張っている主人公の方を好きになってくれるだろう。

 そうなれば必然と僕に話しかけることも少なくなってくれるだろう……。

 うん。いやぁー。僕ってば天才だ!

 僕が潰しちゃった出会いの導入も、順序はめちゃくちゃだけど一応上手く行ったよね!

 これでちゃんとゲームのシナリオは進んでくれるでしょう。ゆっくり魔王を倒していってね!


「良し!これで終わりだね。じゃあ僕はトイレに行ってくるから……アルミスを倒せるようになるまで話しかけないでよね」

 

 僕はそう言い残し、席を立ち上がる。

 

「……なんで俺を巻き込んでくるんだよ……」


 アルミスも僕に続いて立ち上がり、ついてくる。


「良いでしょ?別に。……どうせ勝ってくれるよね?」


「わざと負けても良いんだぞ?」


「うっかり消しちゃってもいいんだよ?」

 

「……」

 

 僕の言葉にアルミスから表情が消え失せる。


「お前が言うと洒落にならないんだけど……」


「まぁ……ね?」


 僕は不敵な笑みを浮かべ、アルミスト一緒にトイレへと向かった。

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