第20話

「うし!」

 

 教室の一番前に立っている女性は全員揃っていることを確認して一つ、頷く。


「私がAクラスの担任を勤めるアリサ・ローウィエだ。よろしく頼む」

  

 女性、アリサ先生が自己紹介を始める。


「担当科目は算術。魔法は風属性を得意とするわね。一応王級の魔法使いよ。あなた達の担任となるレベルの魔法使いであると自負しているわ」

 

 王級魔法使い。その一言にクラスの人たちがざわめき始めた。


「私の自己紹介はここまでにしておくわ。じゃあみんなに自己紹介をしてもらおうかしら。じゃあそこの子からお願いするわね」

 

 アリサ先生はそう言って僕の対角線上に座っている男の子を指差す。

 

「はい!えっと、俺は……」

 

 指さされた男の子は自己紹介を始める。

 そして、その男の子の自己紹介が終わったら次の子、と。

 どんどん自己紹介が進んでいった。

 

 優秀な人間が集まるAクラス。ましてやゲームの舞台となっていることもあり、今年は特別に優秀な人間が多い。

 ゲームの主人公であった勇者の称号を持つ男の子はもちろん。

 王女や公爵令嬢や、他国の王族、侯爵。他の種族であるエルフっ娘など。

 ありえないくらい優秀な人たちが集まっている。

 歴代最高峰だろう。

 今までの学院生全ての情報を持っている僕が言うのだから間違いない。

 学院の試験問題を作っているのはアレイスター家だからね。

 ちなみに今年の問題を作ったのは僕である。当然満点である。


「はい。じゃあ最後」

 

 アリサ先生が僕のことを指差す。


「はい。僕はエルピス・アレイスター。魔法の得意属性は雷と空間。よろしく」 

 

 僕は簡潔に自己紹介を済ませ、席に座る。

 クラスが僕の自己紹介を聞いてざわめく。

 アレイスター。落ちこぼれの代名詞とも言える家名。

 そんな家名の男がAクラスにいると言う驚きと、さっきのような大事を起こしたのかという驚き。嘲笑なども含まれているだろう。

 だが、今の僕は完全プライベートモード。 

 周りからの感情なんて完全シャットアウト。一切気にならない。

 まぁ別に侮られても特になんとも思わないけど。


「はい!皆さん素晴らしい自己紹介だったね。さて、と。これから配布物を配るから……配布物を配り終えたらその後は自由時間だから。好きに交流を図ってね」

 

 アリサ先生はそう告げると、配布物、教科書類を風魔法でそれぞれの席に配っていく。

 ……中世の文明レベルでこんなにきれいな教科書が配られるのか……色々と凄いな。……僕が知らないだけで地球の中世もこれくらい凄かったのだろうか?

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