第21話
「ね、ねぇ!」
全ての配布物を配布し終わり、自由時間となったと同時にリーリエが僕に話しかけてくる。
……いや、まぁ予想は出来ていたけどね。うん。
あまり勇者と関わり合いたくないんだよ……。
メインストーリーに、唯一僕を殺す可能性が秘めている魔王と関わる可能性を作りたくない。
魔王は勇者たちに倒してもらいたい。
……魔王よりも強くなる予定ではあるが、それでもあまり魔王とは関わりたくない。
何故なら僕が勇者たちと関わって魔王討伐に加わろうものなら、その瞬間に王侯貴族たちが動き出す、と予想出来るからだ。
僕に、アレイスター家に功績を作らせるのを良しとはしないだろう。
「なぁ、お前。得意魔法、幻術じゃないのか?」
僕は絶対にアルミスが反応するであろう言葉を投げかける。
「……わざとやっているよね!お前」
アルミスは僕の方へと振り返り、ジト目で眺めてくる。
「……?何のことかわからないね」
僕はわざとらしく首を傾げる。
「はぁー。そういえばお前の得意属性、空間って何?初めて聞いたんだけど」
「ん?別に君の知らない魔法があってもおかしくないだろう?君は魔法の全てを理解しているのかい?」
「あ、あの!」
「いや、してないけどね。……本当に使えるのかい?」
「使えるよ?……見せてほしい?」
「ねぇ!ねぇ!ねぇ!」
「……そんなにもったいぶるかい?」
「当たり前じゃないか。未知の魔法だよ?もったいぶって当然じゃないか」
「それもそうか」
「ねぇ!」
「……っ!?」
僕は耳元で大きな声で叫ばれ、反射的に反応してしまう。……仕事モードにしておくんだった……!
「無視しないでよ……!」
非常識にも僕の耳元で大きな声で叫んだリーリエが瞳に涙すら浮かべて僕のことをじっと睨みつけていた。
「いや、僕はめちゃくちゃ話しかけるなオーラ出してたじゃん。僕のオーラを無視しないで?」
「嫌です!」
「僕も嫌なんだが?」
僕とリーリエはにらみ合う。
「……な、なんでそんなに私と話したくないんですかぁ」
「逆に聞くが初対面で馴れ馴れしく話しかけた女と話したくなる理由は?」
「……俺も割と最初は馴れ馴れしかったが……?」
余計なことを口走るアルミスを僕は睨みつけて黙らせる。
「……うぅぅぅぅぅぅぅぅ」
最初の出来る、貴族の女の姿は何処へやら。
リーリエはまるで小さな子供のように涙目で僕を睨みつけ、不満を顕にする。
「おい!」
そんな時。更に別の人間にまで声をかけられる。
更なる混沌を作り出すつもりか?
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