第30話
突如として……響く、少女のか細い声。
「「「「……ッ!?」」」」
それに対して反応するのは僕とミリア以外の全員。
「な、なんで……?」
キャシーさんは瞳に涙を浮かべながら震える声で呟く。
理解出来ない。キャシーさんはそんな表情を浮かべていた。
そして、その表情を浮かべているのはサブマやミリアも同じだった。
「……わ、わからな……い、え?なんで……?」
キャシーさんの質問に対して、少女、キャサリンは困惑した表情を見せる。
僕が勝手に彼女が無意識の上に排出している魔力を、人間のように呼吸で魔力を吸えるようにしているだけなのだ。
キャサリンからしてみればなんか知らない間に力が湧き上がってきた感覚となるだろう。
キャサリンが自分の魔力が乱れたと感じない程度にしかイジっていないので、キャサリンには本当に何が起きているのかわからないだろう。
「何をしたの?」
みんなが困惑している中、ラザリアが僕の方へと疑問の声を向けてくる。
「ふん。少し、呼吸の手助けをしてやったまでのことよ」
それに対して僕はつまらなそうに吐き捨てる。
「別に治したわけでもない。垂れ流し、無駄にしている魔力を呼吸によって取り込めるように手を加えただけだ。……僕に出来るのは殺すことだけだ。あいにくと死以外の救済を持ち合わせていない」
僕はテーブルの上に置かれている薬を指差す。
「さっさとそれで治すのが吉であろう。……呼吸の補助をするのも飽きてきたぞ?」
なんとか治せないかどうか、僕も色々とバレない程度にキャサリンの魔力に干渉して、こねくり回しているのだけど……その結果は決して良いものであるとは言い難かった。
「そ、そうだな」
僕の言葉にサブマは頷き、瓶を手に取る。
「えぇと……の、飲ませて良いですか?」
「あ、うん。良いわ。お願いしちゃうわね」
キャシーさんへと向けたサブマの言葉に彼女は頷く。
……キャシーさんは未だぼーっとしていて、何が起こっているのか。わかっていない様子だった。
「これを作ってくれたのはそこの男、エルピスだ。……俺は何も出来ていない」
サブマは瓶を持ったままキャサリンにそう話す。
……良かった。ちゃんと言ってくれたか。
「あ、……その、ありがとうございます」
キャサリンは僕の方へと視線を向け、ゆっくりと頭を下げてくる。
「感謝を受け取ろう」
それに対して僕は頷いた。……この感謝はいつか役に立つ日が来ると信じている。
あの男は結構子煩悩であるからな。僕がキャサリンの命の恩人だということを知れば、あの男は僕に協力してくれるだろう。
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