第31話

「じゃあ……口を開いて」

 

「はい……」

 

 サブマの言葉にキャサリンは頷き、口を開く。


「飲ませるよ」

 

 サブマはキャサリンの口に薬を入れていく。

 ……別にキャサリンは自分で飲めるぞ?それくらいには回復したぞ?


「ど、どうだ?」

 

 サブマはキャサリンを見ながら、ためらいがちに口を開いた。

 

「どけ」

 

 僕はそんなサブマのことを蹴り飛ばす。

 その瞬間。

 

 キャサリンを中心に圧倒的なまでの魔力が吹き荒れる。

 

 薬を飲んだ瞬間、キャサリンの全身に魔力がめぐり、膜となる。魔力が溢れ出ないように。

 キャサリンの魔力排出症は無事に完治した。

 

 だが、いきなりの完治。これにすぐ体が対応出来るわけがない。

 心臓は排出しているつもりで大量に魔力を溢れ出させ、体に染み渡らせていく。

 その結果、何が起こるか。

 すぐにキャサリンの体に限界以上の魔力が溢れ、容量いっぱいになってしまった。容量がいっぱいになってしまえば、これ以上の魔力を貯める事はできない。

 それでも発生し続ける大量の魔力。

 キャサリンの体が一気に大量の魔力を吹き出したのだ。


 流石に体が破裂するという事態にはならなかったようだけど。

 ちなみに相手の体に大量に魔力を流して、破裂させるという技も存在している。


「ったく、突っ立ってんなよ。死ぬぞ?」

 

 僕はサブマの方へと視線を向けながら、告げた。


「あ、ありがとう」

 

 サブマは僕のことを見ながら……未だに混乱している状態のまま、僕に向かって頭を下げた。


「おい。もう立てるようになっているぞ」

 

 僕は呆然としているキャサリンへと声を掛ける。


「体に力が……」

 

 キャサリンはゆっくりと自分の体を動かし、ただただ呆然と呟く。


「あ……」


 そしてキャサリンはゆっくりとベッドから降り、自分の足で立つ。


「立てる……立てるよ!お母さん……ぁあ!?」

 

 走り出そうとしたキャサリン……だがしかし、すぐに足をもつれさせ、転びそうになってしまう。


「動いていない奴がいきなり走れるか」

 

 僕は転びそうになってしまったキャサリンを掴む。転ばないように。

 ずっと寝たきりだったキャサリンの体に筋肉はない。走ったりなんかは上手く出来ないだろう。 


「キャサリン!!!」

 

 そしてキャサリンを掴んでいた僕の腕に強い衝撃が走る。


「良かった……」

 

 キャシーさんがキャサリンのことを強く抱きしめたのだ。


「良かった……良かった……良かった……」


 キャシーさんが泣きながら、良かったと呟き続ける。


「お母さん……」

 

 そして、キャサリンも瞳に涙を浮かべて抱き返した。






 あとがき

 寝坊した。

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