第32話
感動の親子。
そんな親子の抱擁。
「良かったな……」
「うぅ……」
「はぁー、良かった……」
それに対して感動するサブマ、リーリエ、ラザリア。
リーリエなんかは涙すら流して感動する。
「……」
そんな中、ミリアはじっと一点見つめている。
二人の間に挟まっている……転びそうになっているキャサリンを支えた時の僕の右腕を。
「ははは」
僕は小さな声で苦笑する。
キャシーさんとキャサリンの間に挟まっている僕の右腕。
僕の右腕は痛いくらいに押さえつけられている。
……気づかないのかよ。こいつら。
「……もういいだろ?」
僕は十分だと判断した段階で二人に声をかける。
「僕の右腕を挟んでいる。邪魔なのだが?」
「あら!ごめんなさい!」
「あ……ごめん」
二人は慌てて離れ、僕の右腕が解放される。
「あふ」
そして、キャサリンは慌てて離れた反動でベッドの方へと転んでしまう。
「大丈夫!?」
そんなキャサリンにキャシーは心配そうに言葉を投げかける。
「うん!大丈夫!体は重くないよ!」
それに対して
「良かった……」
キャシーさんは安堵のため息をつく。
「本当に……良かった」
切実な……子を愛する言葉、気持ち。……あぁ、僕は……。
「ありがとうございました」
呆然としている僕に向かってキャシーさんは頭を下げる。
「礼なら奴に言うと良い。何か出来ることはないかと必死に探し回っていたようだから」
僕はそれに対してサブマのことを指差しながら告げる。
「そうね。本当にありがとうございました」
キャシーさんは深々とサブマに向かって頭を下げる。
「いえいえ!結局俺はなにも出来ませんでしたから」
「いえ……それでもです。本当にありがとうございました」
「ははは」
サブマはキャシーさんの感謝の言葉に照れくさそうにしながら笑みを浮かべる。
……サブマがどのサブイベントを踏んでいるかはわからないけど……おそらくこれがサブマにとって初めて誰かに心の底から感謝されるイベンドのはずだ。
ここでサブマが人から感謝されることの喜びを知ってほしい。
「……一番大変なのはここからだぞ」
既に終わったムードになっている全員を見て僕は口を開く。
「そこの女がいつ魔力排出症になったのかは知らんが、ずっと寝たきりだったせいか体に筋肉はない。それに、魔力の操作も出来ていないからな」
僕は体内で荒ぶりまくっている魔力を見る。
既に心臓は魔力を溢れ出させていないが……キャサリン本人の魔力操作技術の無さが原因で魔力がずっと荒ぶっているのだ。
「このままだと、魔力を暴走させて終わるぞ?」
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