第7話

「パフェを10個ください」


 僕は目の前に居る店員さんに向かって手慣れた仕草でパフェを頼む。

 この店にはちょいちょい来る。

 いつも同じものを頼んでいるため、お店側も僕が何味のパフェを何個求めているか知られるようになっていた。


「はい。他の三人は何になさいますか?」


 店員さんは僕と一緒の席に座っている三人。

 アルミス、サブマ、リーリエへと声をかけた。


「あ、俺は以前と同じいちごパフェで」


 アルミスは前回と同じものを。


「私はキャラメルパフェをお願いしますね」


 リーリエは一番人気のものを。


「……ふむ。それではオススメのものを頂けないだろうか?」


 そして、サブマは──────。


「ふふふ。かしこまりました」


 ──────とってはいけない最悪の選択を選んでしまった。

 店員さんは笑顔を浮かべ、厨房の方へと向かっていった。


「えへへ……またこうしてエルピス君とパフェを食べられるなんて……とても嬉しいです」


「まぁ、昔は良く行ったからな」

 

 僕はリーリエの言葉に適当に頷く。


「えへへ……覚えていてくれたんですね……」


「なんでエルピス君はリーリエちゃんを避けていたんだ?」

 

 サブマが僕へと尋ねてくる。


「黙れ。何故僕がお前の質問に答えなくちゃいけない?」


「……はい」


「邪智暴虐なところは一切変わらないのな……二人共。こんなゴミと関わる必要はないんだぞ?」


「エルピス君のことをゴミって言うのを辞めてください」


「アルミス君だってエルピス君とつるんでいるじゃないか」


「いや、まぁ。俺は色々あるんだよ」


「私にも乙女的な色々があるんです!」


「いや、それはやめろよ?捨てろ?」


「それはエルピス君の頼みでも無理です!乙女は大事なんですよ?秘密です。秘密」


 しばらくの間雑談していると、店員さんが僕たちのテーブルへとやってくる。

 店員さんは器用にも10個すべてを持っての登場である。


「おまたせしました。いつものセットです」

 

 まず最初に僕のパフェ10個が。


「おまたせしました。いちごパフェです」

 

 次にアルミスの分のパフェが。


「おまたせしました。キャラメルパフェです」

 

 次にリーリエの分のパフェが。


「おまたせしました。」

 

 そして、最後に運ばれてきたのはサブマのパフェ。


「へ?」

 

 サブマの前に置かれたのは真っ赤なパフェ。


「こちら当店オススメ『火竜の甘味』となります」


 置かれたのは近くにいるだけで痛くなってくるような激辛パフェ。


「僕の前でパフェのお残しなど当然認められぬ。……わかっておるな?」

 

 僕は笑顔をサブマへと向ける。

 ふふふ。楽しくなってきたではないか!

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