第3話

 ゲームの主人公である男、サブマは神に愛された男だ。

 主人公に相応しい強大な力を持っている男だ。


 アレイスター家は他者とは次元が一つも二つも違う。

 ハイエルフとしてあまりも長すぎる時を生き、自らをずっと鍛え続けてきたマルジェリアにも届きうる刃へとたった十数年の想像を絶する努力だけで至れてしまうのがアレイスター家である。

 

 そんなアレイスター家の中でも最高傑作がゲームの『エルピス』なのだ。

 そして、そんなたった三年で追いつけてしまうのがサブマである。

 流石に転生者として少々特殊な育ちをした今の僕である『エルピス』には三年で追いつけないだろうが……。 


 全てに対して高い才能を持ち、何でもこなせる主人公。

 彼の強さは反則級である。たった一人で魔族を壊滅させられてしまうほどにはチートである。

 実際にゲームの後半から僕は主人公単独でやっていたし。他のキャラを育成している時間がもったいないのだ。主人公一人でゴリ押しで行けると思ったのだ。


 まぁ、ラスボスとして再登場してきたエルピスにコテンパンにやられたのだけど。

 魔族となり、ラスボスとして登場してきたエルピスも大概だった……強すぎてゲーム中の僕がびっくりしたよ……。

 しっかり他のキャラも育てて、様々な道具を駆使してようやく勝利出来たし。

 

「はぁー。なんで俺が戦わなきゃいけないんだ……」

 

 アルミスが僕の横で深々とため息をついている。

 今、僕とアルミスは訓練場の方へと赴いている。アルミスとサブマの戦いのために。


「まぁ、頑張れ。怪我しないようにな。どうせ勝てないから早々に諦めても良いぞ」

 

 ……完全に想定外だ……。

 サブマの成長速度が僕の予想を越えている……。

 まだ一ヶ月しか経っていないぞ!?

 ……リーリエってばちゃんとサブマのこと好きになった?サブマちゃんとエロゲの主人公らしくリーリエとエロいイベントこなしたよね?

 さっきの僕へと向けられるリーリエの視線を見る限りとても気持ちが変わっているようには思えないんだけど……。


 最悪三ヶ月中にリーリエがサブマのことが好きにならなかったときのために、僕がサブマやリーリエとある程度会話しても大丈夫なように工作するつもりだったのに……。

 早すぎるんだよ……。

 まだ工作が終わっていないよぉー。

 一ヶ月の間、僕が生徒会長と体の関係になって南の貴族を壊滅させて、生徒会で南の領地を統治するようになっている間に、サブマはどんな訓練を積んだんだ?


「え……?何?俺、勝利を期待されていないの?」

 

 当然だろう。

 パッと見た感じ100%無理だぞ。……アルミスが全力でやらない限り。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る