第2話

「あー。疲れた……毎日だよ、毎日。こんなの無理だぁ」

 

 隣を歩いているとアルミスが疲れ果てたような声を上げる。

 仕事をすべて終えた僕たち生徒会メンバーは各自解散となっていた。

 僕とアルミスは二人で家へと向かっていた。


「乙ー」

 

 僕はそんなアルミスに気の抜けた言葉を返す。


「……お前が真面目にやっていてくれていれば……こんなに苦労することは……」

 

 アルミスが僕をジト目で見つめてくる。


「ほん?僕はそれでも君よりも遥かに仕事しているが?まぁ、でも安心しろよ。忙しいのは一ヶ月くらいだ。今、平民とかを教育して実務をこなせるように教育中だから」

 

 僕はそれに対して肩をすくめ、答える。

 南の領地へとうちとは関係ないように振る舞っている人間を送り、一生懸命平民に教育を施していた。


「……平民に?出来るのか?そんなこと」


「出来るさ。貴族だって元を延々と辿っていけばただの道草へとたどり着く。ただの道草がきれいな花を開花させることくらいあるだろう。……ふふふ。僕が強制的に花開かせてやる……」


「……お前に教育されるとか……可哀相に……哀れだ」


 僕の言葉を聞いたアルミスは合掌する。

 失礼な……なんて酷いことを言うのだ。全く実に酷い。


「それにしてもどんな貴族も元を辿ればただの道草、か。実に面白い考えだな……。俺の一家も……」

 

 アルミスが顔を俯かせ、ボソリと呟く。

 ……アルミスもまぁ、色々とあるだろう。


「所詮貴族や王族のほとんどはただの道草でしかないんだよ」

 

 ……一部ただの道草じゃない貴族、王族も居るのだけどね。

 人は生まれながらに平等ではない。

 この世界だとすべての一族は平等というわけではない。

 アレイスター家はその代表と言っても過言ではなかった。極一部の一族は頭のおかしいくらい優秀なのだ。

 僕とアルミスは貴族、王族とは何かを話しながら街の中を歩く。


「すみません」

 

 そんな、平和に帰宅していた僕とアルミスに一つの声が投げかけられる。

 ……その声には実に聞き覚えがあった。


「ん?」


「……はぁ」

 

 僕とアルミスは声をかけられた方を向く。

 そこにいたのはゲームの主人公とリーリエだった。ラザリアの姿はない。


「俺は強くなりました。アルミスさんと勝負させてください」

 

 ゲームの主人公は僕たちに、アルミスに深々と頭を下げる。

 圧倒的なチートの塊である主人公が。

 神に愛されし主人公が。

 エルピスに並ぶ可能性のある唯一の人類である主人公が。


「はぁー」

 

 そんな男が今、アルミスへと挑もうとしていた。

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