第三章 ゲームの主人公

第1話

「あー……やること多すぎ」

 

 僕の隣でアルミスが心底疲れ果てた声を上げる。


「というか、お前もやれよ」

 

 そして、アルミスはパフェを嗜んでいる僕に視線を向けてくる。


「ん?僕は既に君の三倍の量をこなしたよ?僕は十二分に働いた。後は君たちの番だよ?」

 

 それに対して僕は笑顔で告げる。


「クソ……」

 

 アルミスはぼそりと呟いた後、黙々と作業を進めた。

 南の領地を僕たち生徒会が統治するようになってから早一週間。

 生徒会は事務作業に追われていた。

 一応統治している人間の中に南の貴族の息子、娘たちもいるはいるけど……統治できるような人材ではない。

 生徒会がすべての事務を担当していた。

 

「手伝えー手伝ってくれー」

 

「……そもそもこうなった原因はあなたにあるはずなのですが……」

 

 三年生たちの視線が僕の方へと向けられる。

 生徒会が尋常じゃないほど忙しくなった


「君たちの仕事量が僕の半分にまで到達したら僕も再開してあげようではないか」


「わかった……その代わりちゃんとやってくれよ?終わったら」


「うん。良いよ。ほーら。がんばれ!がんばれ!」


「くっ……絶妙にムカつく!」


「私わかんなーい!何書いているの?」


「あなたは良いわ……私がやってあげるから」

 

 僕は慌ただしい生徒会室をぼーっと眺めながらパフェを楽しむ。


「エルピス。ちょっとお願いがあるのだけど」

 

 一番仕事をこなしている生徒会長が僕へと声を向ける。


「んー?」

 

「ちょっとここらへんの情報に違和感があって……調べてもらえないかしら?」

 

「見せて」

 

 僕は生徒会長から書類を受け取り、書かれている数字を眺める。

 ……確かにこの数値は少なすぎるかも……。


「ちょっと待って」

 

 僕は生徒会室の外に出る。


「そういうことだから。よろしくね」


「承知」


 僕の影に潜んでいる一人の男が影から出てきて、何処かへと消えていった。

 アレイスター家はあまり移動が早くない。

 なんか馬に嫌われる体質みたいで馬にも乗れないし、ものすごい速度で移動できるような魔法は苦手だ。

 そのため、こういう情報集めは手下のものにやらせることが多い。

 詳しく、正確な情報を集めるとなるとアレイスター家がやるんだけどね。アレイスター家の観察能力は異常だからね。

 

「んしょ」

 

 僕は生徒会室へと戻る。


「今、調べているー。報告待ってー」


「わかったわ」

 

 生徒会長は僕の言葉に頷く。


「君の半分の仕事を終えたぞ?」

 

 副会長が僕に視線を向けて告げる。


「おー。すごいすごい。じゃあ僕もやるかー。もう今日の分も残り少ないし、さっさと終わらせようか」

 

 僕は中央のテーブルに置かれている残り少ない書類の束をすべて回収して自席に着いた。

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