第28話

 出てきた一人の女性。

 黒髪黒目の美しい女性。 

 彼女の名前はキャシー。

 今回、サブマに依頼をお願いした女性であり、魔力排出症を患っている魔族とのハーフの娘の母親である。


「……そ、それであなたが来たということは……」

 

 キャシーさんはそわそわと……そして、少しだけの恐怖心を抱きながらサブマへと視線を向けてたずねる。


「はい……魔力排出症の薬を持ってきました」

 

 キャシーさんの言葉にサブマは頷く。


「本当に!?」


 驚愕するキャシーさんの言葉。


「はい」

 

 それに対してサブマは頷く。

 

「ほ、ほんと……良かった」

 

 それを聞いたキャシーさんは安堵によって腰が抜けたのか、そのまま崩れ落ちてしまった。


「だ、大丈夫ですか!?」

 

 そんなキャシーさんのもとにサブマは駆け寄る。


「あ……あぁ、ごめんなさいね。安心してしまって……」

 

 キャシーさんはサブマに笑顔を見せ、立ち上がる。

 

「ごめんなさいね。……ほら!とりあえず中に入ってちょうだい」

 

「はい。……失礼しますね」

 

 キャシーさんの言葉にサブマが頷き、僕たちは部屋の中へと入っていく。

 部屋の中はあまり広いとは言えず、こじんまりとした感じだ。

 小さなテーブルに椅子が3つ。1つの小さなキッチン。そしてベッドが一つ。

 ベッドには一人の少女が寝かされていた。少女は上半身を起こし、こちらのことを見ていた。


「ほう……」

 

 その少女。

 黒髪と赤目を持った儚げな美少女。

 彼女の名前はキャサリン。


 パッと見は不健康そうな人間にしか見えないが……彼女の魔力の流れは実に面白かった。

 ただの人間の場合は常に魔力が循環していて、失われた魔力は大気中の魔力を吸い込むことで回復する。

 だが、彼女の場合は魔力が上手く循環出来ていないのか常に大量の魔力を垂れ流しにしていた。……そして、失われた魔力は、心臓から溢れ出す魔力によって補填されている。

 失った分の魔力を心臓から溢れ出す魔力で回復する。それは、魔族の特徴と類似していた。

 この方法は大気中から吸い込み、ゆっくりと回復していく人間の魔力回復速度よりも遥かに早かった。

 

 しかし、魔族のように急速に回復していても……それでもなお垂れ流している魔力の方が多いようで、彼女は体内の魔力が足りず、衰弱しているようだった。

 魔力は生命が生きる上での要。魔力が足りなければ体は思うようには動かない。体を動かすことも困難だろう。


「実に面白い少女であるな」

 

 彼女を見て、僕はにやりと笑った。

 ……本当に面白い少女だ。こんなふうに魔力が流れているのか。

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