第41話
エルピスが眠りについてから30分ほど。
ドンッ!!!
いきなり3つあるうちの一つの小屋が抉れ、大きな音が鳴り響く。
大きく土煙が舞い、風が吹き荒れる。
「な、なにごと!?」
「え!?何!?」
「キャッ!何よ!もう!」
「ふへ?」
「……ッ」
突然のことにのんきに寝ているエルピス以外の全員が驚愕し、混乱している。
……寝ているはずのエルピスの魔力が、ほんの少しだけ揺らめいた。
「随分と楽しそうじゃないか……」
そして、響き渡るのは人間を絶望のどん底へと叩きつけるような……威圧的で、恐ろしい声。
低く、恐ろしく、底しれない。
影の、闇も、深淵を思わせるような声。
「「「「「ーーーッ!?!?」」」」」
この場にいた全員に緊張が走る。全員が額から冷や汗を流し、息を呑んでいる。
そんな声と共に土煙の中から出てきたのは一人の大男。
「うぅ……」
「お母さん!!!」
そして、そんな大男の手にはキャシーが捕まえられていた。
それを見たキャサリンが悲痛な叫び声を上げる。
「ま、ぞく……」
ラザリアが呆然と言葉を口にする。
一人の大男。
身長は2mを超えるほどの大型で、肌は黒くて額からは小さな角が生えている。
大柄で肌が黒く、角が生えている。
それは魔族の特徴である。
「かっかっか」
魔族の男は口を大きく開け、笑い声を上げる。
「恩寵を受けたこの女は殺さねぇよ」
「キャッ!!!」
「お母さん!」
魔族の男は手に掴んでいたキャシーを投げ捨てる。
そして、投げ捨てられたキャシーを見て悲鳴をあげているキャサリンを睨みつける。
「だが、汚れた存在は……消毒しないとなぁ……混血など決して許されることではない……絶対に認めてはならぬのだよ。たとえあの御方の血であろうとも……いや、あの御方の血であるからこそ更に認めらないのだよ。……あの御方の血を汚すような存在は……決して認めない……認められない」
魔族の男は親の仇でも見るかのごとくキャサリンを睨みつけていた。
人間と魔族の混血。
それは……人間から見ても、魔族から見ても差別の対象であった。
生まれながらにして汚れた存在であるとされ、殺意を向けられる。それが人間と魔族の混血である。
だからこそ、父親である魔族は表立って関わろうとしないし、二人は人間界の奥地で誰にもバレないようにこっそりと生活を送っていたのだ。
「第三級魔族、アズカバン!汚れた存在に鉄槌を!!!」
アズカバン。
そう名乗った魔族である男は巨大な剣を取り出して大きな声と共に宣言した。
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