第42話

 第三級魔族。

 魔族はその血筋、実力、魔王軍での地位によって級が定まられる。それがたとえ、女であっても同様。

 例外であるのは子供だけで、子供だけはC級という特別な級が与えられている。

 

 一番上が一級であり、一番下が12級。

 一番上である一級が魔王ただ一人に与えられる級だ。

 その次点となる二級は元帥、宰相、軍団長など。圧倒的な地位に立っている強者だけが拝命出来る級である。

 そして、その次が三級。アズカバンの級である。

 二級である面々を支える副団長や将校、指揮官など重要な地位の人間であり高い実力と名家の人間にのみ与えられる級。

 当然三級に慣れる人間はごくわずかであり、その地位に立っているアズカバンの実力は圧倒的なものだ。


「……ぁ……」

 

 当然。

 人類側も魔族たちの強さの指標である級についてぐらいは知っている。

 三級の恐ろしさも。


「エルピスをッ!?」

 

 慌ててサブマが叫ぶ。

 現状をなんとか出来るのは、第三級の魔族と相対しても勝負になるのはエルピスだけ。

 サブマはそう思ってこう叫んだ。


「無理だ」

 

 それに対して……サブマのそんな言葉を、ミリアが無情にも否定する。

 キッパリとした言葉で。

 

「今、エルピス様が寝ておられる小屋には結界が貼られている。決して破るのことの出来ない結界を。自分の時間を奪うような邪魔者が現れないように……そんな邪魔者に自分の時間を阻害されないようにするため」


「なっ」

 

 ミリアの言葉にサブマは絶句する。

 

「……起きるのはしっかりと一時間昼寝を取った後。その後でようやく私が中に入れるようになる……それまでは……どうすることも出来ない」


「……」


「そん、な……」


「……っ」

 

 ミリアの言葉を聞いたサブマ、リーリエ、キャサリンは絶望的な表情を浮かべる。


「使えないわねッ!!!あの馬鹿ッ!アホッ!ドジッ!間抜けッ!!!あほんだらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!」

 

 そしてラザリアは大きな声をあげて、悪態をついた。

 何故か、ラザリアの大声はあまり悲観的ではない。それでも、ラザリアの声色がくらいことには変わりないのだが。


「……だから……」

 

 ミリアは地獄の雰囲気の中、言葉を続ける。


「後……後、30分はみんなで耐えなきゃいけない」

 

 魔族と戦ったこともないような学生たち。

 そんな学生たちがいきなり第三級の魔族と戦う。圧倒的な強者たる第三級の魔族と戦う。

 殺す必要まではないとはいえ……それでも一時間耐える必要がある……。

 どう考えても絶望的だった。


「ごちゃごちゃうるせぇな……オイ」

 

 アズカバンがゆっくりと口を開き、そして……。

 流れるように大地を蹴った。

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