第43話

「ごちゃごちゃうるせぇな……オイ」

 

 アズカバンがゆっくりと口を開き、そして……。

 流れるように大地を蹴った。


「へっ?」

 

 アズカバンは向かう先はキャサリン。

 キャサリンは特に何もすることが出来ず……ただ呆然とアズカバンを眺めることしか出来ない。

 自分の方へと剣を振るっているアブカバンを。


「ぼーっとしないでください!!!」

 

 そんなキャサリンを守るべく、リーリエが動く。

 リーリエはキャサリンを弾き飛ばし、キャサリンの代わりにアブカバンの一撃を喰らう。


「くっ……」 

 

 そして、リーリエはしっかりとアズカバンの攻撃に耐えきって見せる。


「30分!たったの一時間だけ頑張る!それだけ!それだけなの!!!だから!!!みんなで頑張ろ!!!私たちなら出来るから!!!……だから!戦わないと!」

 

 リーリエはみんなを鼓舞するように声を張り上げる。


「ちっ……邪魔するんじゃねぇよ」

 

 ウザそうにアズカバンが舌打ちする。

 そして、目の前のキャサリンを睨みつける。


「……ハッ!お前ら人間どもがどれだけ頑張っても無駄に決まっているんだろッ!!!」

 

 アズカバンがリーリエの結界へと足を乗せる。

 そして、ほんの少しだけ力を入れる。


「おらッ」


「あっ!?」

 

 あっさりとアズカバンは結界を破壊し、リーリエの持っている盾へと足を乗せた。 

 そのタイミングでミリアも動き出す。

 

「ふんっ」

 

 ミリアが投擲した数本のナイフをアズカバンは平然と受け止める。


「この程度で……」


「ヤァ!!!」


「シッ!!!」

 

 それに続くようにサブマとキャサリンがアズカバンへと攻撃を仕掛ける。

 

「……ふー」

 

 アズカバンは剣を振るい、それらを容易く跳ね返す。

 そして、ラザリアが放った風魔法もアズカバンの結界によって防がれる。


「俺の目的は汚物たるそこの女の抹殺である」

 

 アズカバンはキャサリンへと視線を送り、言葉を告げる。


「別にお前ら人間の命を奪うことではない……何もするな。死にたくなければな」


「断る!!!」

  

 アズカバンの言葉にサブマが大きな声を上げる。


「自らの友を見捨てる奴がどこにいるんだッ!!!」

 

 サブアがキャサリンの前へと立って、剣を構える。

 他の面々も各々の武器を構えて立つ。


「……」

 

 アズカバンはそれらを見て沈黙する。

 

「カッカッカ」

 

 そして、笑い声を上げた。


「愚かな生命体よのぉ。下らぬ友情のために己の命を捨てるか。生命として実に愚か、劣等よのぉ」

 

 アズカバンは自らの手に握られている剣を振り回した。


「自らで選んだのだ。さっさと死ね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る