第5話
「私たち三人が集まって家でゆっくりとしているなんて……」
「僕たち三人が揃うなんて中々ないからねぇ」
「であるな。俺もお前も忙しいからな」
「……そろそろ作戦も大詰めだからね」
王都。
王都に存在している宿屋……そこの一室。
そこに僕と僕のお父様とお母さんが揃ってお茶をしていた。
アレイスター家の剣として僕もお父様も世界各地を渡り歩いて仕事をしている。
僕は学院がある関係上国内に留まって活動していることが多いが……お父様の場合は世界のどこにでも行っている。
僕とお父様が揃うことは稀だろう。
お母さんは普通の人なので、暇なのだが。
僕のお母さんは侯爵家令嬢で、お父様との大恋愛の果てに結婚している。
「ふふふ……もうすぐ終わるのね。……あなたたちが重役から解放されてこうしていつも穏やかな生活を送れるようになると良いわね」
「「……」」
心底嬉しそうに言葉を話すお母さん。
「そう、だね。それが一番だよ」
「あぁ。そうだな。……俺らに心休まることなんてほとんどないからな」
僕もお父様も自分が歩んできた道を振り返れば、血と死体しかない。
心休まる時が来ても良いだろう……この世界に善良な神とやらが居るのならば。血に塗れながらも残酷な運命を歩き、抵抗する僕らに報いの一つくらいあっても良いだろう。
「ちゃんと学校生活を送れてている?」
「まぁ、やっているよ……予想以上に友達が出来て困っているよ」
「駄目よ?友達は大切にしないと……大事な人の存在があなたの人生を彩り、支えていくのだから」
「……」
僕はお母さんの言葉に何も答えられない。
「あ、好きな女の子は出来た?エルピスってば可愛いしモテると思うんだけど」
「好きな女の子は出来ていないよ……モテてはいるけどね」
「……どうせ好き放題抱きまくっているんでしょ?一人に絞らなきゃ駄目よ。お父さんってば私と付き合っているときでも平然と女の子とそういう行為していたし……はぁー。血筋かしら」
「「はは……」」
お母さんのその言葉に対して僕は苦笑する。
僕の苦笑はお父様の苦笑と揃った。
「むー。女たらし」
「職業病だし……」
「女を抱くことなど上手い食事を取ることと同義だったからな……」
僕とお父様は一般常識からはねじり曲がりまくった言葉を告げる。
「まったく。あなたたちは……」
お母さんは僕とお父様の言葉に呆れたように物を告げた。
「じゃあ……それじゃあ僕はそろそろ行くよ。ちょっと仕事があってね」
これからちょっとだけおいたをした裏組織の狩りをしなきゃいけない。
「……愛しているよ。お父様。お母さん」
「えぇ。私も愛しているよ」
「……俺もな」
僕は一室から退室した。
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