第41話

「ど、どうぞ。入っていいわ」 

 

 生徒会長が戸惑いつつも許可を出す。


「失礼します」

 

 テリアが生徒会室へと入ってくる。


「それで?お客さんというのは……?」


「私だ」

 

 テリアを押しのけて、一人の男性が生徒会室の中へと入ってくる。

 そして、生徒会室の空気が一変する。

 

「ッ!?」

 

 その男を見て生徒会長が愕然とする。口を半開きにさせ、体を振るわせる。

 そこに立っている男。

 2mを超える圧倒的な身長に、僕5個分くらいありそうな巨大な筋肉。

 辺境伯特有の衣を身に纏い、腰には剣を付けている。

 子供が泣き出すような強面の顔面には深い傷跡が刻まれている。

 彼の纏っている覇気と魔力はあらゆる人を威圧し、動けなくさせる。

 アルミスも、ミリアも、アレリーナも。三年生であるポルパ、テリアでさえも動けなくさせる。

 生徒会長も目の前の男を前に体を振るわせる。

 

 この男の名はレルガ。

 

 生徒会長の父親であり、南方の辺境伯だ。

 辺境伯は自らの覇気と魔力を開放しただけでこの場を支配する─────僕さえいなければ。


「ご機嫌麗しゅう?一体何の用だい?おっさん」

 

 僕は平然と言葉を口にする。

 この程度の威圧など、無きに等しい、というか何も感じない。


「なぁ、おっさん。貴様が何処の誰かは知らぬが、アポもなしに突撃してくるのは辞めてもらおうか。非常識たるぞ?」

 

 辺境伯によりこの場の支配を打ち破るように誰よりも傲慢に告げる。


「……辺境伯であることすら見抜けぬ間抜けが……黙っておれ」


「わかった上での皮肉だ。下郎。頭まで筋肉に犯されているのか?全く哀れで珍妙な生き物よ」


「……貴様ァ!喧嘩を売っているのか!?」

 

 辺境伯は僕を睨みつけ、青筋を浮かべる。


「な、な、なっ……駄目!」


 慌てる生徒会長。


「黙っておるが良い」

 

 そんなに生徒会長に向かって僕は一言告げる。


「ここでは権力など関係ないのだよ?おっさん。貴様はいきなり我々の部屋にアポ無しで突撃した男でしかない。……逆に言おう。喧嘩を売っているのか?」

 

 僕は立ち上がり、辺境伯の前に立つ。

 体格差は歴然。


「……生意気なガキよ……ガキを教育するのも大人の宿命」


「ァ?」

 

 戦力差も歴然である。


「……ッ!?」

 

 辺境伯はその場から後退る。

 僕はほんの一部の魔力を開放しただけである。膨大な魔力のごく一部を。


「あまり偉そうにするなよ?侵入者。その上で僕は寛大にも聞いてやっているのだ。何の用だ?とな。大人しく要件のみを告げるが良い」

 

 この場の支配権は既に僕が握っていた。

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